クラウドオブジェクトストレージとは、非構造化データをクラウドに保存する方法だ。オブジェクトベースのストレージは、柔軟性と拡張性に優れているため、クラウドで最も一般的なストレージ方式の1つとなっている。
クラウド上のオブジェクトストレージを利用すれば、多数のデバイスを1つのストレージプールにまとめ、複数の場所からリモートでアクセスできる。大量のデータを日常的に扱う企業は、通常このタイプのクラウドストレージを利用する。
世界のクラウドオブジェクトストレージ市場について、以下で詳しく見ていこう。
クラウドオブジェクトストレージ市場
2020年のクラウドオブジェクトストレージ市場の推定市場規模は48.3億ドルだった。年平均成長率(CAGR)は13.6%と見込まれ、市場規模は2028年までに136.5億ドルに達すると予測されている。
北米は2021年、地域別で最大の市場となり、年間市場収益の32%を占めた。さらに、2018年から2026年までの予測期間における成長率は21%と、最も高くなると見込まれている。
アジア太平洋地域と西欧の一部でも、高い成長が期待されている。一方、MENA地域と中南米地域では成長率が鈍化する。
業界別では、2020年時点の世界のクラウドオブジェクトストレージ市場で、銀行・金融サービス・保険(BFSI)業界が最も高い収益率を占めた。これにソーシャルメディア、IT、通信の各分野が僅差で続いた。
市場におけるその他の主なエンドユーザー分野には、次のようなものがある。
- 政府
- 製造
- ヘルスケア
- ライフサイエンス
- 小売・消費財
- メディア・エンターテインメント
クラウドオブジェクトストレージの機能
クラウドオブジェクトストレージは、メール、メディア、Webページ、センサーデータなどの非構造化データに適したデータストレージアーキテクチャだ。データの1つひとつをオブジェクトとして扱い、メタデータとともに別々の保管場所に保存する。
クラウド上のオブジェクトストレージは、短期・長期にわたって保存すべき非構造化データを大量に受け取る企業に、さまざまな用途を提供する。
モノのインターネット
オブジェクトストレージは、モノのインターネット(IoT)デバイスが生成するマシン間のデータ変換をサポートする。機械学習、人工知能(AI)、高度な分析システムによるデータ処理を可能にし、洞察や実行可能な情報を導き出せる。
クラウドネイティブアプリ
オブジェクトベースのストレージは、クラウドネイティブアプリ向けの効率的な永続クラウドストレージの選択肢となる。インターネット経由でアクセスできるため、特にモバイルアプリをスムーズに動作させられる。
ビッグデータ分析
オブジェクトクラウドストレージは、ビッグデータ分析の実行、クラウド上の非構造化データへのアクセス、洞察の抽出に効果を発揮する。
データのアーカイブとバックアップ
クラウドオブジェクトストレージは、企業に低コストで長期的なデータ保存・アーカイブの選択肢を提供する。同時に、拡張性、セキュリティ、耐久性を損なうことなく、データへのアクセス性も維持できる。
クラウドオブジェクトストレージのメリット
オブジェクトクラウドストレージのモデルは汎用性が高い。クラウドベースのソリューションであるため、データの品質やセキュリティを犠牲にすることなく、規模や業種を問わず企業が利用できる。
クラウドオブジェクトストレージの主なメリットには、次のようなものがある。
- 拡張性
- アクセスとバックアップ復旧のための高速なデータ取得
- 費用対効果の高さ
- メタデータのカスタマイズが可能
- 柔軟な管理と一元的な制御
- インターネット経由のリモートアクセス
- セキュリティと規制コンプライアンス要件への対応を効率化
「コストから拡張性まで、今日のオブジェクトストレージソリューションは、特に大容量かつ複雑性の高いログデータにおいて、他の追随を許さない。……要するに、このタイプのアーキテクチャに移行すると、通常はクラウドコストが大幅に下がる」Todd PersenForbes Technology Councilのメンバーはそう語る。
「最後に、オブジェクトストレージでは、クエリ、読み取り、書き込みをほぼ瞬時に実行できる。処理が同時に数千台ものディスクに分散される可能性があるため、ディスク数が少ない場合に発生するI/Oパフォーマンスのボトルネックは、単純に消えてなくなる」
クラウドオブジェクトストレージのユースケース
以下のケーススタディーは、さまざまな業界の組織がクラウドオブジェクトストレージソリューションを利用して、コスト削減と生産性・成長性の向上を実現している例だ。
Herman IT
Herman ITは、ハイパフォーマンスコンピューティング、マルチクラウド、ハイブリッドクラウド、プライベートクラウドの各モデルに特化したデータセンターサービスプロバイダーだ。フィンランドを拠点とするHerman ITは、データの保存、保護、利用において、持続可能で効率的な方法を提供している。
激化する競争で優位に立つため、Herman ITは顧客向けサービスに最新技術を導入しようとしていた。顧客が抱える一般的な課題の1つは、急増するデータと、信頼性と安全性を備えたストレージを導入する余裕がないことだった。
Herman ITはIBM Cloud Object Storageを利用して、独自のデータアーカイブ、バックアップ、リカバリーサービスを開発した。これにより、高速、安全、信頼性の高い、手頃な価格でのデータアクセスと保存が可能になった。
「IBM Cloud Object Storageによって、低いストレージコスト、事実上無制限の拡張性、ノンストップの可用性を提供しながら、データをウォームな状態、つまりすぐにアクセスできる状態に保てることを実証している」Veli-Antti LeinonenHerman ITの営業マネージャーはそう語る。
「多くの企業にとって、データは競争優位性をもたらす一方で、大きなコストとリスクの源でもある。当社の新しいデータバックアップ・アーカイブサービスは、IBM Cloud Object Storageを利用して、高速で安全、信頼性の高いデータアクセスを実現する」
Herman ITは、顧客のコンプライアンス対応を簡素化し、コストを削減し、ストレージ容量を拡大するとともに、自社の市場シェアも拡大できた。
University of Leicester
University of Leicesterは、イングランドのレスターに拠点を置く公立研究大学だ。
大学は約3万人の学生と教職員のデータをシステムで扱っており、バックアップインフラでは増え続ける非構造化データに対応しきれずにいた。
データストレージソリューションのアップグレードを検討した結果、LeicesterはCloudianのS3互換オブジェクトストレージシステム、HyperStoreへの切り替えを決めた。
「Cloudianでは、VMで試用でき、ノートパソコンにも15分で自分でインストールできる点が気に入った。Cloudianシステムを簡単に管理できるという自信につながった」Mark PennyUniversity of Leicesterのシステムスペシャリストはそう語る。
「実際には決して行わないような、ハードウェア全体の交換テストを含め、システムを壊せるかどうかを試すために多くのことを行った。それでもまったく問題はなかった。すべてがそのまま動作した」
Cloudianのソリューションは大学のCommvaultベースのバックアップと互換性があり、ストレージ要件を50%削減するとともに、コストを約25%削減できた。
BriteSky
BriteSkyは、企業向けに統合型およびカスタム型の情報・データネットワークソリューションを提供するコンピューターハードウェアメーカーだ。カナダのオタワを拠点とし、顧客によるデータの保存・管理を支援し、途切れない事業運営を実現している。
BriteSkyの顧客の多くは、頻繁に変化するデータプライバシーおよびセキュリティ法への対応を懸念していた。顧客が重い罰則や罰金を回避できるよう支援するため、BriteSkyは自社のクラウドサービスを改善しようと考えた。
BriteSkyは、顧客のカナダのデータ主権法への準拠を支援するため、NetApp StorageGRID Object Storageを利用することにした。
「扱わなければならないデータ量は、まさに天文学的だった。データをより長期間保持するサイクルに適した設計で、複数のサイト間でデータを簡単にレプリケーションできるプラットフォームが必要だった」Richard LosierBriteSkyのテクノロジー担当バイスプレジデントはそう語る。
「顧客が何を求めているのか、ITがどこへ向かっているのか、人々がどんな問題を解決しようとしているのかを考えると、NetApp Data Fabricのストーリーを見て『ついにソリューションが登場した』と言える」
BriteSkyは、顧客が現地のデータ法を遵守できるよう支援できた。また、長期的なデータ保持サイクルと容易なレプリケーションをサポートするプラットフォームも設計できた。
クラウドオブジェクトストレージプロバイダー
クラウドオブジェクトストレージ市場を代表するベンダーには、次のような企業がある。
- AWS
- Microsoft
- Dell Technologies
- Hewlett Packard Enterprise (HPE)
- Hitachi Data Systems
- NetApp
- Caringo
- IBM
- Datadirect Networks