データセンターでは何年も前から仮想化が進められてきた。そして、そのプロセスは今も続いている。仮想化のあるレベルが成熟すると、データセンターのサービスやワークロードをさらに別の方法で仮想化する道が開かれるようだ。
データセンター仮想化における主要なトレンドを紹介する。
1. データセンターのRAS
データセンターのRAS(信頼性、可用性、保守性)の重要性が再び高まっていることを、Gary Smerdon氏は指摘する。TidalScaleの社長兼CEOである同氏によれば、その理屈は単純だ。今日のビジネスはデータを基盤としている。そして、処理すべきデータ量は増え続けている。IT組織は競争力を維持するため、このデータを効率的に処理し、そこから得た洞察に基づいて行動できなければならない。しかし、データの増加は従来型ITインフラの能力を上回りつつある。近年、ハードウェアシステムでは障害発生率がますます高くなっている。
Googleは2009年、訂正不能なメモリエラーがサーバー障害の最大の原因だと特定した。そして現在、障害が発生する可能性は10年前の50倍にもなっている。その他のエラー原因には、電源やファン、ネットワーク、ストレージに関連するものがある。このため、RASはデータ関連の専門家にとって重要なトレンドとなっている。
「ITインフラを真に近代化するには、ハードウェアシステムが自己最適化と自己修復を行える必要がある」とSmerdon氏は述べた。「これが、稼働時間を最大化し、事業継続性を維持する方法だ」
同社は、自己最適化システムを現実のものにするソフトウェア定義サーバーテクノロジーに、ますます注目する顧客と協力している。顧客が自己修復システムの実現に乗り出すことで、IT環境を未来へと導く動きが広がっている。
2. ペタバイト規模の仮想メモリ
アプリケーションは、かつてないほど多くのリソースを必要としている。コンピューティング能力の急増とメモリ技術の進歩が相まって、新たな可能性が開かれている。その一つが、容量と帯域幅の負荷を担うCXL(Compute Express Link)バックボーンと、メモリ速度でデータを処理するメモリ仮想化ソフトウェアを中核とする、ペタスケールの仮想メモリプールの登場だ。
「新しいインターコネクトとソフトウェアは、CXL互換の新たなプロセッサー、メモリチップ、PCIカード、サーバー、ストレージシステムからなる巨大なエコシステムを支える」と、Frank Berry氏は述べた。MemVergeのマーケティング担当副社長である。
3. データを大量消費するAIアプリケーションが主流に
AIの能力が進化するにつれ、開発者はこうした新しい能力を活用するアプリケーションを構築している。その結果、データセットのサイズが急激に拡大している。このトレンドによって、アプリケーションがメモリの壁に突き当たり、その症状としてストレージのボトルネックが発生し、結果が得られるまでの時間を遅らせている事実が明らかになった。
「データセットが数百ギガバイトに達すると、ファイルのロード、保存、複製、復元といった日常的な作業に数分から数時間かかるため、以前は機能していたものがもはや機能しなくなる」とBerry氏は述べた。「不正検知やソーシャルメディアのプロファイリングといったリアルタイムアプリケーションだけでなく、動画レンダリングやバイオインフォマティクスのような長時間実行アプリケーションも、テラバイト単位のデータを処理することが多く、データへのより高速なアクセスを必要としている」
4. CXLテクノロジーが要請に応える
CXLは、長らく待ち望まれていたデータセンターのメモリ階層の近代化を実現し、データセンター仮想化の階層においてメモリを一級市民にする。CXLインターコネクトは、サーバー内でメモリクラスの帯域幅とレイテンシを実現し、複数のラックへ拡張できる。CXL以前は、サーバー内の数テラバイトのメモリを共有できるにとどまった。CXL導入後は、複数のサーバー内や外部メモリアレイ内のメモリによって、ペタバイト規模のメモリを共有できるようになる。CXL以前は、メモリはプロセッサーごとにサイロ化されていた。CXL導入後は、CPU、GPU、DPUなどがメモリを効率的にプールして共有できる。CXL以前は、メモリはコンピューティング、ストレージ、ネットワークのようにコンポーザブルではなかった。CXL導入後は、メモリの容量、性能、QoS、可用性、セキュリティ、モビリティをメモリ仮想化ソフトウェアでプロビジョニングできる。
「長期的には、ペタスケールのメモリがアプリケーションの構築方法や利用方法を変える可能性がある」とBerry氏は述べた。「チップ設計、アニメーション、ゲノム解析など、作業を分解して別々の部分で処理するアプリケーションは、1つのメモリ空間にペタバイト単位のデータをロードできるようになり、協業の新時代を切り開くだろう」
5. データセンターは今やメモリを仮想化できる
ストレージエコシステム全体で、CXL互換のハードウェアとソフトウェアの開発・リリースが進んでいる。CXL時代を見据えて設計された製品の一部は現在すでに利用可能で、サーバーの出荷が始まればCXLへ移行できる状態にある。
- コンポーザブルなデータセンターインフラシステム:LiqidとGiga-IOは、メモリを含むコンポーザブルストレージシステムをすでに提供している。
- メモリ仮想化ソフトウェア:MemVergeは、PMemとDRAMを仮想化し、メモリプールをプロビジョニングするための一連のメモリデータサービスを提供するソフトウェアを出荷している。
- 異なるプロセッサーで共有できるメモリカード:SmarModularは、異種プロセッサー(Intelプロセッサーだけではない)で利用できるPMem搭載カードを提供している。
さらに、データセンターインフラの各領域で製品が登場し始めている。CXL互換プロセッサー、メモリチップ、メモリモジュール、メモリアレイ、スイッチ、内部にCXLインターコネクトを備えたサーバー、CXLサーバーとCXLメモリアレイを備えたクラスター、そしてメモリ階層化ソフトウェアなどだ。
6. ハイパースケーラーが先導
ハイパースケールの導入は早ければ2023年に、特定のアプリケーション向けのいくつかのポイントソリューションから始まる見通しだ。その後、コンポーネント、システム、オープンソースソフトウェアが十分な規模で統合・テストされると、大規模導入へと進む。ハイパースケーラーは、巨大なデータセットを扱い、可能な限り迅速に結果を提供する必要があるアプリケーションを持つアーリーアダプターの中で、先頭を走っている。これには次のようなものがある。
- リアルタイムアプリケーション:不正検知、小売りのレコメンデーションエンジン、ソーシャルメディアのプロファイリング
- 長時間実行アプリケーション:ゲノム研究、EDA、アニメーション/VFX、地球物理探査
大規模なデータセットを扱うAI主導の主流ビジネスアプリケーション