IBMは、企業がハイブリッドクラウド戦略を採用する際に直面し得る複雑さを軽減するため、クラウドベースのSpectrumストレージ製品の提供先をMicrosoft Azureにも広げる。
同社はすでに、IBM CloudとAmazon Web Services(AWS)を対象にSpectrum Virtualize for Public Cloudを提供している。これは、IBMのFlashSystemおよびSAN Volume Controllerに搭載されているソフトウェアのクラウドベースの代替製品だ。
今回、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)が、AWSに次ぐ世界第2位のパブリッククラウドプロバイダーであるAzureにも対応する。Spectrum Virtualize for Public Cloudは、オンプレミスのデータセンターにあるものと同じストレージ機能をクラウド上で提供する。
共通性が鍵
クラウドとデータセンターで共通のストレージ機能を利用できれば、企業は、ディザスタリカバリ、クラウドDevOps、データ移行といったハイブリッドクラウドのストレージ機能を実装しやすくなると、IBMのプロダクトマーケティング担当プログラムディレクターであるChris Saul氏はブログ記事に記している。
「クラウド間で同じ機能を提供するため、複数のクラウドを利用したり、あるクラウドから別のクラウドへ移行したりすることも容易になる」とSaul氏は記している。
今回の新製品は、アプリケーションとデータをクラウドに移行する際に生じる課題に対処するため、IBMがSpectrumストレージポートフォリオ全体で進めている多数の機能強化の1つだ。Saul氏は、IBM Institute for Business Valueによる最近のレポートに言及している。同レポートでは、97%の企業がクラウドイニシアチブを試行または実装しているか、業務にクラウドを統合していることが明らかになった。
「しかし、ハイブリッドクラウド環境が標準になるにつれ、企業はさらなるITの複雑さ、パブリッククラウドのコスト、サイバー攻撃やその他のデータ破壊事象による脅威に対処しなければならない」と同氏は記し、IBMの新たな機能と統合は「組織がITの複雑さを軽減し、コスト効率の高いソリューションを導入し、ハイブリッドクラウド環境におけるデータとサイバーレジリエンスを向上させるために設計されている」と付け加えた。
関連記事:新たなストレージ製品でハイブリッドクラウドに注力するHitachi Vantara
ハイブリッドクラウドの複雑さを軽減
パブリッククラウドとオンプレミス環境で機能、API、管理、ユーザーインターフェースの一貫性を確保することで、IBMはハイブリッドクラウドの問題を軽減できるという考え方だ。Azure上でSpectrum Virtualize for Public CloudはIBM Safeguarded Copyをサポートする。これは、マルウェアを含むソフトウェアからアクセスできない、隔離された変更不能なスナップショットコピーを自動的に作成し、問題が発生した場合にはオンプレミスまたはクラウド上のデータを迅速に復旧できる機能だ。
IBMがSpectrumのストレージ機能をパブリッククラウドに移行することは、クラウドを活用したい組織にとって重要だと、Pund-ITの主席アナリストであるCharles King氏は述べている。Pund-IT。
「IBMの顧客は、ハイブリッドマルチクラウドのサービスとインフラストラクチャを利用する最大級のユーザーだ」とKing氏はEnterprise Storage Forumに語った。「IBMは早い段階で、パブリッククラウド事業者のような低いボリューム単価を模倣しても意味がないと認識した。その代わり、大企業の顧客を対象としたソリューションとサービスの開発に注力し、同時に、そうした企業がAWSやAzureなどのパブリッククラウド企業も利用していることを認識していた。異種のクラウドプラットフォームと環境をサポートすることで、IBMは顧客にとっての自社の価値を高めてきた」
一貫した機能
Clabby AnalyticsのアナリストであるJane Clabby氏は、レポートで、「IBMのSpectrum Virtualizeは、IBM製および他社製の500以上のストレージシステムをサポートし、幅広く多様なストレージにわたって一貫した管理インターフェースとストレージソフトウェア機能を提供する」と記している。同氏は、データ削減機能によってクラウドストレージの利用量を最大65%削減できるとも述べた。
「主要なパブリッククラウドであるAWSとMicrosoft Azureを仮想化することで、顧客は、レガシー、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド、IBM Cloud、AWS、Microsoft Azureを含むIT環境全体で、一貫したデータ運用、データサービス、データ保護、セキュリティを利用できる」とClabby氏は記している。
IBMはまた、プラットフォームのサイバーセキュリティ機能を強化し、次のようなランサムウェアなどの脅威から企業を守るため、他のSpectrum製品群にも機能強化を施した。
Spectrum Protectでは、追加のデータ保護サーバーへのバックアップデータのレプリケーションに対応したほか、オブジェクトストレージや長期データ保持の利用もサポートするようになり、バックアップコストを削減できる。さらにSpectrum Protect Plusには、コンテナ内のデータを保護するため、Red HatのOpenShift Kubernetesプラットフォーム向けの機能改善が含まれる。Red Hatの認証、AzureにデプロイされたOpenShiftワークロードのサポート、S3オブジェクトストレージへのダイレクトバックアップなどが追加された。
Spectrum Scaleのデータファブリックには、高性能なS3オブジェクトインターフェースが搭載され、クラウドネイティブなS3アプリケーションが、オブジェクトストレージにありがちな遅延なしに高速な結果を提供できるようになった。新しいGPUダイレクター・ストレージインターフェースにより、NvidiaのアプリケーションはSpectrum Scale上で最大100%高速に実行できる。IBMのElastic Storage System 3200には、38TBのFlashCore Moduleが搭載されるようになった。これは従来モデルの2倍の大きさで、2ラックユニットでのESS 3200の容量を912TBへと倍増させる。
関連記事:ハイブリッドマルチクラウド戦略を描く
Turbonomicがもたらす可能性
IBMはまた、今夏買収したTurbonomicを基盤にした取り組みも進めている。Turbonomicはアプリケーションおよびネットワークのパフォーマンス管理ソフトウェアを手掛ける企業で、IBMはハイブリッドクラウドにおける人工知能(AI)ベースの自動化の活用を拡大する、より大規模な取り組みの一環として同社を買収した。TurbonomicはFlashSystemストレージから、各アレイのストレージ容量、IOPS、レイテンシなどのデータを収集する。その分析エンジンは、FlashSystem製品に加えて仮想化やアプリケーションからのデータも組み合わせ、ソフトウェアが必要とするストレージパフォーマンスを確保する。
目標は、組織がストレージを過剰にプロビジョニングする必要をなくし、パフォーマンスを損なわずに容量を30%向上させることだ。
「Turbonomicのソリューションは、AIを含むツールを活用し、オンプレミスとクラウドにおけるコンピューティング、メモリ、ストレージ、データベースのリソースを効果的に管理することで、アプリケーションのパフォーマンスを高めるよう設計されている」とPund-ITのKing氏は述べた。「そのため、IBMのようにシステムとサービスのパフォーマンス最大化に注力するベンダーとは非常に相性が良い」
同氏によると、ストレージは今後もハイブリッドクラウドにおける重要な要素であり続ける。
「データストレージは奇妙な位置付けにある。テーマとしては特に人気がない一方で、オンプレミスとクラウドにおけるAI、機械学習、高度な分析など、重要なワークロードに不可欠な性能と容量の革新を今も推進している」とKing氏は述べた。「データポータビリティなどのストレージ機能は、ビジネスクリティカルなワークロードを支えるサービスで重要な役割を果たす。AIと関連プロセスへの継続的な注目によって、データ管理プロセスの価値と重要性が浮き彫りになっている。クラウドにおけるGIGO[garbage-in, garbage-out(ごみを入れれば、ごみが出る)]は、オンプレミスのGIGOと同じように有害な影響を及ぼす」
Clabby氏は、IBMがOpenShiftなどのテクノロジー向けに新たなソリューションを導入し、AWS、Azure、その他のパブリッククラウドプロバイダーへの対応を進めることで、コンテナやハイブリッドクラウドなどの新興テクノロジーを引き続きサポートしていると指摘した。
「今回の一連のストレージ発表は、複数ベンダーのパブリック、プライベート、オンプレミス環境にわたって、共通の管理、一貫したデータアクセスとデータ共有、データレジリエンスを向上させることで、その戦略をさらに強化するものだ。データサイロとデータセキュリティの隔たりをなくし、IT専門家がより高度な課題に集中できるようにする」とClabby氏は記している。