サーバーレスコンピューティングとは、アプリケーションを実行するためのコンピューティングリソースがオンデマンドで提供されるクラウドサービスです。
アプリケーションを支える物理インフラとサーバーの処理・保守は、サードパーティーのクラウドサービスプロバイダーが担います。
サーバーレスコンピューティングを利用するソフトウェア開発者は、サーバー環境を気にすることなく、リモートでコードを開発・実行できます。
世界のサーバーレスコンピューティング市場について、以下で詳しく説明します。
サーバーレスコンピューティング市場
サーバーレスコンピューティング市場の2020年の推定規模は72億9000万ドルでした。2021年から2028年までの予測期間に年平均成長率(CAGR)21.71%を維持すると見込まれ、2028年には368億4000万ドルに達すると予測されています。
複数の地域がサーバーレスコンピューティング市場の成長をけん引しています。
- 米国市場は2021年に16億ドルと推定され、市場の36%を占めました。
- 中国は16%で2番目に大きなシェアを占め、2027年には45億ドルに達すると予測されています。CAGRは25%となる見込みです
- 。日本とカナダは、2020年から2027年までの予測期間に、それぞれ23.5%、21.7%の成長が見込まれています
- 。欧州市場は市場全体の16%を占め、6.79%のCAGRを維持し、2027年には209億2000万ドルに達すると予測されています
- 。ドイツは欧州で最も高い水準の予測CAGRの1つで、17.8%となっています
- 。オーストラリア、インド、韓国がアジア太平洋市場の成長をけん引すると予測されています
サーバーレスコンピューティング市場の需要は、主に以下の業界のエンドユーザーが生み出しています。
- IT・通信
- 銀行・金融サービス・保険(BFSI)
- 小売・消費財
- 製造
- 医療
- メディア・エンターテインメント
「サーバーレスアーキテクチャの導入により、組織は、新しいハードウェアコンポーネントの購入、インストール、設定、トラブルシューティングといった、高コストで時間のかかる従来のプロセスを根絶できます」と、Verified Market Researchはサーバーレスアーキテクチャ市場に関する2022年のレポート概要で述べています。
「このような環境では、サーバーレスコンピューティングがクラウドサービスやアプリケーションを展開するための重要な要素として登場しました。モバイルバンキングアプリケーションとしてモバイルユーザーの信用スコアを確認する機能を設計する場合、機能を構築、テスト、提供するまでに、従来のInfrastructure as a Service(IaaS)型クラウドインフラストラクチャモデルでは数日から数週間かかる可能性があります」
サーバーレスコンピューティングの機能
サーバーレスコンピューティングは、バックエンドのクラウドインフラ管理という負担なしに開発者が利用できる、すぐに使えるプラットフォームを提供します。
これは、サーバーレス環境を構築するために連携して機能する技術コンポーネントと属性の集合です。
Functionality-as-a-Service(機能性のサービス化)
Functionality-as-a-Service(FaaS)は、サーバーレスコンピューティングアーキテクチャの基盤です。開発者がアプリケーションの開発、実行、管理に利用するプラットフォームです。
データベースとストレージ
サーバーレスアーキテクチャのデータ層は、SQL・NoSQLデータベースとオブジェクトストレージで構成されます。サーバーレス化により容量やクエリーの制限がなくなり、インフラを線形にスケーリングし、オンデマンドでコストを発生させられます。
イベントストリーミングとメッセージング
サーバーレスコンピューティングはイベント駆動型であり、さまざまなイベントストリーミングプラットフォームによるワークロードストリームの処理に適しています。
API
APIは、サーバーレスコンピューティングのエンドユーザーとプロバイダー間の接続を簡素化・効率化します。応答ログを保持し、データ共有・閲覧ポリシーを管理し、HTTPルーティングを提供します。
ソリューションとして、サーバーレスコンピューティングアーキテクチャは、企業環境におけるさまざまなユースケースに利用できます。
Webアプリとモバイルアプリのデプロイ
アプリの開発とデプロイは、サーバーレスコンピューティングの最も一般的な用途の1つです。サーバーレスコンピューティングは変動するワークロードに適応できるため、通常は構築・管理が容易です。
モノのインターネット
モノのインターネット(IoT)ネットワークデバイスは、サーバーレスの利用例です。ホームオートメーションや企業独自のソリューションにおけるIoTでは、リモートサーバーに接続されている限り、大容量のデバイスは必要ありません。
データ処理
イベントベースのアーキテクチャであるサーバーレスコンピューティングは、データ処理に適しています。カスタム関数を特定のデータストリームイベントや発生事象に割り当て、オンデマンドで流入するデータを自動処理できます。
クラウド自動化
サーバーレスコンピューティングは、サーバーへの24時間365日のアクセスを必要としないクラウドタスクの自動化に利用できます。データベースのバックアップや定期的な設定変更などがその例です。
サーバーレスコンピューティングのメリット
サーバーレスコンピューティングのメリットは、クラウドがもたらすメリットと似ています。サーバーとインフラの管理・保守を外部委託することで、企業は数多くのメリットを得られます。
サーバーレスコンピューティングの一般的なメリットには、以下があります。
- 利用量に応じた料金モデルによるコスト効率
- インフラ管理の必要性を排除
- ほぼ瞬時のスケーリング
- 信頼性
- アップデートと設定の迅速なデプロイ
- アプリケーションの近くでコードを実行することによるレイテンシーの低減
「サーバーレスを始めるにあたり、インフラ全体を刷新する必要はありません。AWS、GCP、Azureのいずれかでホスティングしている限り、現在のインフラを維持しながら、APIのルート単位でサーバーレスを実装できます」とKris Jones氏は述べています。同氏はForbes Technology Councilのメンバーです。
「これにより、コスト削減やスケーラビリティ向上という、サーバーレスの主なメリットの2つを通じて、サーバーレスの即時的な効果を実感できます」
サーバーレスコンピューティングのユースケース
サーバーレスコンピューティングソリューションは、コンピューティング能力とサーバーに費やす時間、労力、コストを最小限に抑えたい企業に利用されています。
DingDingNow
DingDingNowは、パンデミック初期の2020年初頭に設立されたスタートアップです。リモートワークを余儀なくされた従業員や独立請負業者のために、ネットワークと対面ミーティングの空白を埋めることを目指しました。
同社はできるだけ早く需要に応える必要があり、インタラクティブで市場投入可能なプラットフォームをゼロから期限内に構築できませんでした。Sufleと協力することで、DingDingNowはAmazon Chime SDKを通じてサービスを開始し、初日からサーバーレス化を実現しました。
DingDingNowは、新しいサービスに積極的なSufleの恩恵を受け、AWSをサーバーレスのビデオ会議インフラとして利用しました。このソリューションは、コスト効率とスケーラビリティの両方に優れていました。
「私たちが抱えていた当初の課題は、DingDingNowを完全にクラウドネイティブにし、堅牢なセキュリティとクラウド上のベストプラクティスを適用してデプロイしたいということでした」とDingDingNowの共同創業者兼COO、Sunil Anand氏は述べています。
「これを実現するうえで、Sufleは最も信頼できるアドバイザーでした。Sufleは私たちのためにAWS Lambdaをサーバーレス環境として設計し、AWSの設定をデプロイするとともに、全体のクラウド支出が大幅に減るようソリューションを設計できました」
DingDingNowはサービス開始から数週間で、ユーザー数をゼロから数百人に増やし、短期間に数十件のライブチャットをホスティングできました。
Power Ledger
Power Ledgerはエネルギー業界の企業で、独自のブロックチェーン対応エネルギー取引プラットフォームを使い、効率的なエネルギー市場を実現しています。オーストラリア、インド、日本、タイ、米国でソフトウェアが利用されており、Power Ledgerの技術は世界的に認められています。
Power Ledgerのモデルが政府、個人、企業の注目を集めるにつれ、同社は変化なしに成長率を維持できないと認識しました。
Power Ledgerは、サービスを提供するすべての場所で多数の物理インフラ上にソフトウェアを稼働させるのは現実的でないと判断しました。新しい顧客を獲得するたびに、社内で管理・保守するサーバーとストレージ容量が追加で必要になったためです。
Power Ledgerは、プラットフォームの自動化、デプロイ、管理にKubernetesのオープンソースシステムを利用しました。また、ソフトウェアのホスティングと世界中の顧客へのリモートアクセス提供にはGoogle Cloudを利用しました。
「プロジェクトに必要なオンラインリソースに簡単にアクセスできました。これは、Google Cloudに開発者サポートが整っていることを示す良い指標です」とPower Ledgerの共同創業者兼テクニカルディレクター、John Bulich氏は述べています。
「製品の使いやすさと複雑さのなさも、移行を進めるうえでの体験を非常に良いものにしました」
Power LedgerはGoogle Cloudによってクラウドコストを30%削減し、インフラ管理にかかる時間を、デプロイチーム1チームあたり約5時間まで短縮できました。
SiteSpirit
SiteSpiritは、さまざまな業界向けにバックオフィスシステムやWebサイトを開発するソフトウェアコンサルティング企業です。同社のソリューションには、Webホスティングとコンテンツ管理ツールのPageSpiritが付属しています。
同社のサービスの1つに、顧客がマーケティングキャンペーンで利用できるメディアライブラリがありました。しかしSiteSpiritは、顧客がWebサイト用のメディアを探して編集する時間を短縮したいと考えていました。
IBM Cloudantを利用して、SiteSpiritはクラウドベースのメディアライブラリサービスMediaSpiritを構築できました。メディアライブラリをサーバーレス化することで、顧客ごとに数千枚の画像を保存、タグ付け、取得、操作する必要がなくなりました。
「Cloudantは全文検索が驚くほど高速で、OpenWhiskはユーザー数にかかわらず一貫して高いパフォーマンスを維持します」とSiteSpiritの共同創業者、Barry Nijenhuis氏は述べています。
「システムに大きな負荷がかかっているときでさえ、応答時間は1秒未満です」
IBM Cloudantにより、SiteSpiritはコストを90%削減し、顧客向けの画像検索を10倍高速化するとともに、使いやすいオンラインアーカイブにメディアを保存できました。
サーバーレスコンピューティングのプロバイダー
サーバーレスコンピューティング市場の主要プレーヤーには、以下が含まれます。
- AWS
- Microsoft
- IBM
- Alibaba Cloud
- Google Cloud
- CloudFlare
- KNative
- Parse
- Oracle
- StackPath