Webアプリケーションファイアウォールとは?
Webアプリケーションファイアウォール(WAF)は、オンライン上のセキュリティ脅威や悪意のある攻撃者、攻撃からWebアプリケーションを保護するために特化して設計されたセキュリティソリューションです。デジタル社会への依存が高まるにつれ、セキュリティリスクも増大しており、企業は機密性の高い顧客データや業務データへのアクセスに悪用される可能性のある脆弱性から、Webアプリケーションを守る必要があります。この記事では、Webアプリケーションファイアウォールの仕組みと弱点を説明し、企業が利用できるさまざまな種類のWAFについて詳しく紹介します。
Webアプリケーションファイアウォールとは?
国際標準化機構(ISO)のオープン・システム・インターコネクション(OSI)モデルには、標準プロトコルを使って異なる種類のシステムが通信できるようにする7つの層があります。各層はそれぞれ異なる役割を担い、上下の層と通信しています。インターネットはOSIモデルに厳密に従っているわけではありませんが、同モデルはネットワークを理解するうえで有用な指針となります。
Webアプリケーションファイアウォールは主にアプリケーション層、つまり最上位層で動作するため、送信元と送信先のアドレスから脅威を判断するだけでなく、送信されるデータを監視・スキャンできます。一般的なインターネットのネットワーク要求が処理される層であるため、特定の種類の悪意ある脅威の標的になりやすい層でもあります。
WAFは、受信トラフィックをあらかじめ定義したルールや既知の脅威と照合し、悪意のあるトラフィックを特定してシステムへの到達を阻止します。脅威には、SQLインジェクション攻撃からクロスサイトスクリプティング攻撃まで、さまざまなものがあります。WAFが脅威を検知すると、トラフィックがアプリケーションへ進むのを遮断できます。また、イベント分析に備えて、アプリケーションの動作をログに記録します。
WAFの仕組み
Webアプリケーションファイアウォールには複数の種類があり、アプリケーション層にホストされるか、サーバー上に配置されるかによって仕組みが異なります。いずれも目的は同じですが、その実現方法はそれぞれ異なります。
ネットワーク型WAF
ネットワーク型WAFは通常、ネットワークのエッジに専用ハードウェアとして配置され、Webアプリケーションと、受け入れ前の外部トラフィックとの間に防護壁を築きます。受信トラフィックを傍受し、一連のルールに従って正当なものと有害なものを判別します。
アプリケーションと同じネットワークおよび環境で動作するため、両者の間に分断が生じません。一方で、物理サーバーの保守・管理が必要となるため、WAFの中では最も高価な種類です。ネットワーク型WAFは、複数のWebアプリケーションを同時にホスティング・運用する大規模企業に適しています。
ホスト型WAF
ホスト型WAFは、Webアプリケーションのホスティングサーバーに直接インストールされます。ネットワーク型とは異なり、ホスト型ファイアウォールは保護対象のWebアプリケーションのすぐ近くで動作し、アプリケーションのセキュリティ管理者があらかじめ定義したルールに基づいて受信トラフィックをフィルタリングし、悪意のある攻撃からアプリケーションを守ります。
より柔軟なカスタマイズや細かな調整が可能なため、極めて機密性の高いユーザーデータを扱う金融・医療アプリケーションなど、特定のセキュリティ要件を持つアプリケーションに適しています。ただし、ホスト型WAFは維持に多くのリソースを必要とし、セットアップも複雑になりがちです。ネットワーク型WAFより安価ですが、時間の経過とともにコストが積み上がる可能性があります。
クラウド型WAF
クラウド型WAFは、クラウドサービスプロバイダーを介して導入します。クラウドを社内でホスティングする場合でも、セキュリティ・アズ・ア・サービスのような外部のサードパーティーサービスを利用する場合でも、どこからでもリモートで管理できます。既知の脅威とルールのリストに照らして受信トラフィックをフィルタリングし、安全なトラフィックを判別することで、Web上から発生するさまざまな脅威や攻撃から保護します。
ネットワーク型やホスト型のWAFとは異なり、クラウド型WAFはオンプレミスのハードウェアを必要としないため、より低コストで導入でき、リソースが限られた企業でも利用しやすいのが特徴です。また、拡張性が高く、需要や受信トラフィック量が大きく変動する企業にも適しています。
WAFを利用するメリット
WAFでWebアプリケーションを保護すると、次のような多くのメリットが得られます。
一般的な攻撃からの保護
WAFは、Cookieポイズニング、SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング攻撃など、最も一般的なサイバー脅威からWebアプリケーションを守るために特化して設計されています。こうした攻撃を阻止することは、Webアプリのデータの安全性と完全性を維持するうえで不可欠です。
迅速かつ簡単な導入
より包括的なサイバーセキュリティソリューションやファイアウォールと比べ、WAFは迅速かつ簡単に導入できます。最も使いやすいソリューションなら、数回クリックするだけでセットアップできます。そのため、ITリソースが限られている組織や、Webアプリケーションに信頼性の高いセキュリティソリューションを急いで導入したい組織に適しています。
カスタマイズ可能なルールセット
ほとんどのWAFベンダーやプロバイダーは、製品に幅広い柔軟性を持たせています。アプリケーション固有の要件やセキュリティニーズに応じて、特定の種類のトラフィックをブロックするカスタムセキュリティルールを設定できます。このセキュリティレベルをカスタマイズできる機能により、WAFを組織が求める保護レベルに正確に合わせられます。
リアルタイム監視
WAFはWebアプリケーションのトラフィックをリアルタイムでスキャンするため、潜在的なセキュリティインシデントを迅速に特定して即座に対応できるほか、後の分析に備えてすべてのイベントや事象を詳細に記録できます。継続的な監視により、ユーザー側や内部エージェント側の不審な挙動を通じて、攻撃の初期兆候を特定することも可能です。
業界標準への準拠
地域や連邦のデータ関連法規制は業界によって大きく異なりますが、適切に調整されたWAFを導入することで、企業はこうした規制を遵守し、関連する罰金や罰則を回避できます。実際、決済カード業界データセキュリティ基準(PCI DSS)やEU一般データ保護規則(GDPR)など、国際的または欧州を拠点とする顧客・ユーザーを抱える企業に厳格なコンプライアンス規制への対応で重要な役割を果たします。
WAFのデメリット
WAFにはWebアプリケーションの保護に関して幅広いメリットがある一方、弱点や欠点もあります。主なものは次のとおりです。
誤検知と見逃し
WAFは、一連のルールや既知の脅威に照らして受信トラフィックをスキャンするため、正当なトラフィックを誤って悪意のあるものと判定し、誤検知を引き起こすことがあります。逆に、実際の脅威を検知できず、見逃しとなる場合もあり、アクセス障害や検知されないデータ侵害につながる可能性があります。
複雑な設定
WAFで脅威を正確に特定するには、継続的な更新やメンテナンスに加えて、専門的な知識による細かな調整が必要です。特に、動的で複雑なWebアプリケーションでは、時間と手間がかかる難しい作業になる可能性があります。
パフォーマンスへの影響
WAFは悪意のある活動がないかすべての受信トラフィックをスキャンする必要があるため、Webアプリケーションに遅延が発生し、速度やパフォーマンスが低下する可能性があります。定期的に大量の受信トラフィックを処理する大規模なアプリケーションでは、この影響がさらに大きくなります。
可視性の制限
WAFは主にHTTPおよびHTTPSトラフィックを監視するため、他のチャネル経由の攻撃や、ゼロデイ脆弱性、Advanced Persistent Threats(APT)のような分散型攻撃など、より高度な攻撃手法を検知できない場合があります。
結論:Webアプリケーションファイアウォール
WAFは、オンラインサービスやWebアプリケーションの安全性と完全性を確保するうえで、不可欠なリソースとなっています。潜在的なサイバー脅威を傍受・防止し、機密データを保護する役割は、規制への準拠だけでなく、顧客やビジネスパートナー双方の信頼を得るうえでも重要です。WAFは受信トラフィックをスキャンして悪意の兆候を検出する仕組みであるため、より高度な攻撃を見逃したり、アプリケーションのパフォーマンスや応答時間に遅延を生じさせたりする可能性はあります。しかし、サイバー脅威からWebアプリケーションを守ろうとする企業にとって、WAFは重要なツールです。