データアーカイブとは、使用されていないデータや過去のデータを、将来の参照や規制コンプライアンス要件への対応を目的として、安価なオフラインストレージへ移行し、保持するプロセスです。データアーカイブによって、企業の高速ストレージ媒体やプロセッサーが古いファイルや日々の業務に関係しないデータに圧迫されるのを防ぎ、将来の参照や法的義務への対応に備えてデータを保存しながら、企業のリソースを有効活用できます。本記事では、データアーカイブのプロセスとメリット、レガシーデータをアーカイブするためのベストプラクティスについて詳しく解説します。
データアーカイブとは?
データアーカイブとは、古いデータや重要性の低いデータをオフラインのリポジトリに保存する手段です。大量のデータを収集・利用する企業では、その規模のデータを保存・処理するコストが高くなる可能性があります。特に、ビジネスインテリジェンスのための迅速なアクセスや分析を実現するために、フラッシュストレージなどの高速な媒体に保存している場合はなおさらです。
データ量が増えるにつれて、システムの処理能力も低下し始めます。重要性の低いデータを削除すれば、システムを最高の性能で稼働させ、ストレージコストを削減できます。しかし、日々の業務で使われなくなった古いデータであっても、組織が保持しておきたい理由はいくつかあります。
場合によっては、法律や監督機関によって企業にデータの保持が義務付けられています。コンプライアンス規制では、企業が特定のデータを法的に保持しなければならない期間が定められていることが少なくありません。訴訟やその他の法的措置に直面している企業は、主張を裏付けたり、裁判所の要求に応じたりするために、文書を提示する必要が生じることもあります。アーカイブされたデータは、対象となるデータや文書が数十年前のものであっても、eディスカバリーなどの新しいテクノロジーを使って検索・調査できます。
ベストプラクティスとして、企業のIT部門は古いデータや使用頻度の低いデータを特定し、アクティブなデータベースやリポジトリから安価な「オフライン」ストレージ媒体へ移します。必要なときには、そこからデータを取り出せます。
データアーカイブの仕組み
データアーカイブは、IT部門が関係者と協力してデータ保持ポリシーを策定することから始まります。このポリシーでは、古くなったデータや不要になったデータの種類を特定し、廃棄するまでの保持期間を定めます。データ保持ポリシーは、データ保持に関する規制要件と、歴史研究におけるデータの有用性に関する社内の判断の両方に適合していなければなりません。
データ保持ポリシーを定めたら、IT部門は特定した古いデータや不要なデータをコールドストレージへ移します。コールドストレージとは、低速で信頼性の高いストレージを指し、多くの場合はハードディスクドライブが使われます。安価で保守も容易です。一方、ホットストレージは、処理や分析のためにデータを定期的かつ迅速に保存・アクセスする高速な媒体です。コールドストレージからデータを取り出すことはできますが、時間がかかるため、運用データには適していません。

アーカイブされたデータは通常、企業が日常的に利用するものではないため、データアーカイブは年1回または半年に1回だけ実施すればよい場合があります。
データ保持ポリシーは、常に見直しが必要な文書です。企業のITリーダーは、規制および法的要件を常に把握し、コンプライアンス機関や社内の関係者と協議して、ポリシーを改訂する必要があるか、またいつ改訂すべきかを判断しなければなりません。データ保持ポリシーの見直しと承認が済んだら、指定された保持期間を超えたアーカイブデータを廃棄できます。
データアーカイブのメリット
データ保持規制への準拠は、多くの企業がデータアーカイブに取り組む主な理由ですが、考慮すべきメリットはほかにもあります。
1つはコストです。高速ストレージは高価ですが、古いデータはコールドストレージに移すことで、より低コストで保管できます。もう1つはパフォーマンスです。古いレコードをデータベースからアーカイブへ移すと、システムに余裕が生まれ、より効率的かつ高速に稼働できるため、トランザクションの速度と検索の品質が向上します。
法的手続きに備えて過去のデータを保存しておくことも、企業にメリットをもたらします。例えば、特許侵害の疑いがある場合、アーカイブデータに証拠が存在すると考えられれば、そのデータが「アクティブ」になる可能性があります。企業の法務チームは、アーカイブデータをクラウド上で法的検索できるeディスカバリーサービスを利用するケースが増えています。そのため、日々の業務に関係しなくなった後もデータを保持する価値があります。
データアーカイブのベストプラクティス
データアーカイブの概念は単純ですが、成功させるにはいくつかのベストプラクティスに従う必要があります。ここでは、データアーカイブに関する業界標準のベストプラクティスを8つ紹介します。
アーカイブ前にデータを特定・分類する
データとシステムにはさまざまな種類があります。多くの場合、データアーカイブの分類は、アクティブなデータの分類と密接に対応します。各システムに存在するそれぞれのデータタイプを分類し、管理対象となるすべてのデータの完全な分類体系を作成する必要があります。これにより、IT部門とエンドユーザーは、アーカイブ対象となる各データタイプについて個別のデータ保持ポリシーを定められるほか、一部のデータタイプを専用のアーカイブへ移した方が効果的かどうかも判断できます。例えば、基幹システムのデータとメールを1つのアーカイブに、文書や写真などの大容量で非構造化されたデータオブジェクトを別のアーカイブに保存する、といった判断が可能です。
適切なアーカイブツールを選ぶ
データアーカイブは検索可能でなければなりません。IT部門は、アーカイブデータに使用するストレージ媒体だけでなく、データを容易にインデックス化、検索、取得するためのツールも考慮して判断する必要があります。市場にはさまざまなデータアーカイブソフトウェアや、データアーカイブサービスがあります。
コールドストレージソリューションを選ぶ
アーカイブデータの目的は、単純に保持することです。取得する頻度は低いかもしれませんし、一度も取得しない可能性もあります。ストレージの観点では、信頼性とアクセス性を備えた最も安価なストレージを使用すべきです。一般的には、大容量で低速なハードディスクドライブをベースとしたコールドストレージが、手頃な価格で利用できます。
コールドストレージを維持する
コールドストレージは、設定したら放置するものではありません。データアーカイブのスケジュールに沿って定期的に点検し、ストレージ媒体を適切に保守する必要があります。正しく運用すれば、データアーカイブは安心感をもたらします。しかし、運用を誤ると、必要なファイルをオフサイトストレージから取り出そうとした際に、データが破損していることに気付く可能性があります。
データ保持ポリシーを見直す
企業は、アーカイブデータに関するポリシーを文書化しておくべきです。これらのポリシーは、少なくとも年1回、どのデータを保持し、どのデータを廃棄するかというIT部門の判断に役立ちます。データや保持要件は変化する可能性があるため、データ保持ポリシーはユーザーや規制当局と定期的に見直す必要があります。規制当局、監査人、弁護士はしばしば、新たなデータ保持要件が施行される前に把握しているため、先手を打って対応することが有効です。
データアーカイブのスケジュールを設定する
データアーカイブは場当たり的に行うべきではありません。企業のデータ管理戦略の一環として定期的に実施すべきです。多くの組織では年1回のスケジュールで十分ですが、半年に1回の実施を選ぶ組織もあります。
適切なタイミングでデータを廃棄する
データアーカイブの主な目的は、調査や法的手続きに必要となる可能性のある古いデータや不要なデータを保存することです。しかし、ポリシーで定めた保持期間を超えたデータを削除し、アーカイブデータを整理しておくことも同様に重要です。これにより、データの検索・取得処理が効率化され、ストレージと処理にかかる負荷が軽減されます。
データバックアップとデータアーカイブの違い
一見すると、データアーカイブはデータバックアップに似ています。どちらも、アクティブな業務システムで使用されていないストレージデバイスへデータを移す処理を伴います。しかし、目的は異なります。データバックアップは、アクティブなシステムに障害が発生した場合の冗長な安全策として、アクティブなデータをオフラインストレージにコピーするために使われます。バックアップの対象となるのは、企業にとって最も重要なデータです。一方、データアーカイブでは、古いデータや不要なデータだけを保存し、アクティブな利用ではなく、過去の参照を目的として保持します。
IT部門がデータバックアップとデータアーカイブに関して行う判断や処理も異なります。データバックアップには、稼働中のシステムで失われたり侵害されたりしたデータを迅速に復元できる、高速で高価なストレージが必要です。データは常に最新でなければならないため、夜間または日中を通じてバックアップされます。データアーカイブでは、データのストレージへの移行は通常、年1回など頻度が低く、低速で安価なストレージ媒体に対して行われます。
結論:企業のデータアーカイブ
データアーカイブは、すべての企業のデータ管理戦略の一部であるべきですが、多くの組織は十分に対応できていません。収集するデータ量が増えるにつれて、保存コストも増加します。しかし、コンプライアンス違反や法的対応の誤りによって生じる潜在的なコストは、それ以上に大きな損害をもたらす可能性があります。
データ保持ポリシーを策定し、見直し、更新することで、企業は最も重要なデータをアクティブなストレージに保持し、古くなったデータや過去のデータをオフラインストレージに移せるようになります。また、これらのポリシーによって、あらゆる種類のアーカイブデータをどのくらいの期間保持するかも決まります。
データアーカイブは、IT部門だけが実施する作業ではありません。影響を受けるすべての関係者が関与すべき、全社的な取り組みです。全スタッフに周知して徹底するとともに、法務アドバイザーやコンプライアンス規制当局と協力し、定期的に見直して改訂する必要があります。優れたデータアーカイブ戦略は、データを保存するコストと、保存しないコストのバランスを組織が見極めるのに役立ちます。
企業がデータを安全に管理・保存するための手法について詳しく知るには、次に企業のデータストレージセキュリティに関するベストプラクティス12選をお読みください。