ワイドエリアネットワーク(WAN)は、IT環境における主要な存在であり続けてきた。WANはデバイス間の通信と情報共有を可能にする。インターネットを世界最大のWANと考える人さえいるだろう。
しかし、WANを提供するプロバイダーはほかにも数多く存在する。これらの通信ネットワークは、複数の拠点や世界各地にあるデバイスを接続する。企業はこれらをリースすることが多い。アクセスには仮想プライベートネットワーク(VPN)、ワイヤレスネットワーク、セルラーネットワークのほか、Webブラウザーも利用される。
しかしここ数年、ソフトウェア定義ワイドエリアネットワーク(SD-WAN)が登場した。SD-WANは、ソフトウェアをハードウェアへの依存から切り離すソフトウェア定義型のネットワークアプローチを採用し、企業やエッジロケーションに、より柔軟なネットワークサービスとクラウドアクセスを提供する。従来型WANと比べて、コスト、拡張性、ユーザー体験、導入の容易さが向上する点もメリットだ。
企業やIT専門家がSD-WAN市場で注目している主なトレンドを以下に挙げる。
1. クラウド導入がSD-WAN普及を促進
SD-WANには関心を生み、導入を促すのに十分な機能とメリットがあるが、クラウドの劇的な普及から恩恵を受けたことは間違いない。SD-WANはクラウド導入の追い風に乗ることができた、と考える人さえいるだろう。
「SD-WANが登場して以来、ユーザーは従来のMPLSに代わる、単に低コストで接続性を提供するだけではないWANを求めてきた」と、Algobluの最高製品責任者であるEdward Qin氏は述べた。
「デジタルトランスフォーメーションと世界的パンデミックの二重の影響により、クラウドへワークロードを移行する企業が増えている。従業員がいつでもどこからでも企業ネットワークにアクセスしたいという要求に応えるには、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)、次世代ファイアウォール(NGFW)、侵入防御デバイス(IPD)、データ損失防止(DLP)など、クラウドネイティブな高度セキュリティサービスとのSD-WAN統合が不可欠になる」。
2. コンシューマー市場の成長
SD-WANおよびWANは、企業ネットワークの基盤となる存在だ。しかし、SD-WANの市場投入により、コンシューマー分野でも関心とイノベーションが高まっている。
「SD-WAN技術をコンシューマー市場向けに利用するトレンドに気付いた」と、AlgobluのQin氏は述べた。
「4K/8K UHD動画、オンライン教育、VRゲームやVRライブストリーミング、メタバースなどのアプリケーションが急増する中、SD-WANは現在、大容量帯域幅、超低遅延、アプリケーション指向のエンドツーエンドのネットワーク品質保証というニーズに応えている」。
3. VPNの代替
仮想プライベートネットワーク(VPN)は、かなり以前から企業の標準となってきた。しかし、リモートユーザーが企業ネットワークに安全に接続する手段として、VPNはその優位性を失いつつある。SD-WANサービスがVPN分野から市場シェアを奪っている。
「パンデミックによって、多くの企業や組織のデジタルトランスフォーメーションが大幅に加速した」と、AlgobluのQin氏は述べた。
「従業員が在宅勤務を選ぶ中、旧来型のリモートアクセスVPNは、より高度なSD-WANサービスに置き換えられ始めている。SD-WANサービスは企業リソースへの安全なアクセスを提供するだけでなく、SaaSアプリケーション向けのDDoS対策やインテリジェントなトラフィックステアリングなど、多くの優れた機能も統合している」。
4. セキュアアクセスサービスエッジ
Dell’Oro Groupによると、WAN企業ネットワークとセキュリティの融合が、セキュアアクセスサービスエッジ(SASE)関連のネットワークおよびセキュリティ技術の力強い成長を促している。
「パンデミックによってリモートワークとクラウドベースのアプリケーションが不可欠になり、その結果、従来のハブ・アンド・スポーク型ネットワークモデルの陳腐化が加速した」と、Dell’Oro Groupでネットワークセキュリティ、SASE、SD-WANを担当するリサーチディレクターのMauricio Sanchez氏は述べた。
「ネットワークとセキュリティを、別々に解決すべき問題として考えるのではなく、現在では連続体として捉え、クラウドに適したネットワーク技術とセキュリティ技術を共にSASEへと推進している」。
Gartnerによると、「SASEに必要な幅広い機能群を備えていないベンダーは、この市場で長期的に競争することができず、少数のエンドユーザー組織の戦術的ニーズに応えるだけの存在と見なされるだろう。単一のエンドツーエンドソリューションを提供することで収益とアカウント支配の最大化を目指すITベンダーは、SASEの提供によってその目標を実現できる」。
5. SD-WANの明るい未来
これらのトレンドが相まって、SD-WAN市場はネットワーク分野で最も注目を集める市場の一つになっている。
SD-WAN技術で構成されるSASEネットワークの2021年の売上高は20億ドルを超え、前年から35%増加した。ITやセキュリティ分野で、これほどの成長率に近い市場はほとんどない。Cisco、Fortinet、VMware、Versa、HPEなどの主要SD-WANベンダーは、最新機能を満載した製品を相次いで投入している。
「企業が導入を進めているクラウドサービスとワークロードに合わせて支店ネットワークアーキテクチャの最適化を続けたため、2021年にはSD-WANソリューションの需要が高まった」と、Dell’Oro GroupのSanchez氏は述べた。