スケールアウトストレージとは、ネットワーク接続ストレージ(NAS)を拡張するために使われるアーキテクチャ用語です。ネットワークに物理NASデバイスを追加するたびに、ストレージ容量を「スケールアウト」していることになります。クラウドストレージの増量と、自社ネットワーク上の物理ストレージの増設は区別する必要があります。スケールアウトストレージは、後者を指します。
クラウドストレージを増やすのではなく、物理ストレージデバイスを追加する理由は何でしょうか。内部ネットワークをスケールアウトすると、企業はデータ、ストレージ、プライバシー、セキュリティをより直接的に管理・制御できます。また、企業のエッジ、例えば遠隔地の製造工場や営業所の近くに物理ストレージデバイスを配置できる点も有利です。
この記事では、スケールアウトストレージの仕組みを説明し、データストレージのアプローチとして導入することで組織が得られるメリットを探ります。
スケールアウトストレージの仕組み
ネットワークに追加された各NASデバイスには、内蔵ソフトウェアによって制御されるドライブアレイが搭載されています。NASデバイスはネットワークと直接通信するノードとなるため、IT部門がリモートで管理でき、どこにいる承認済みのエンドユーザーからでも容易にアクセスできます。
NASデバイス内の個々のディスクは、同期書き込みによる冗長データを保存するよう構成できます。そのため、ディスクの1台に障害が発生した場合でもフェイルオーバーを容易に実行でき、システムのダウンタイムを最小限に抑えられます。
スケールアウトNASストレージは、ブロック、ファイル、オブジェクトベースなど、あらゆるタイプのデータに利用できます。NASデバイスにはハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)を搭載でき、最大ペタバイト単位のデータを保存できます。
スケールアウトストレージのメリット
企業はかつて、1つの筐体に収められた大規模な内部ストレージアレイに依存していました。これらは必要量を大幅に上回るストレージを提供することが多く、その結果、多くの企業がストレージに過剰な費用を支払っていました。スケールアウトNASデバイスはこの問題の解消に役立ちました。NASを使えば、必要に応じて内部ネットワークにストレージを段階的に追加できます。
スケールアウト型のネットワーク接続ストレージは、組織のガバナンスにも役立ちます。例えば、企業がパブリッククラウドに保存したくない機密性の高い社内データを、侵害や窃取から守るために、スケールアウトNASに保存することができます。すべての機密データを社内の管理下に置けます。
IoT(モノのインターネット)やその他のエッジデバイスは、データが生成される場所の近くにあるローカルのネットワーク接続ストレージへ直接データを送信できます。これにより、クラウドストレージとのデータ通信コストを削減し、データを一元管理できます。
スケールアウトNASストレージが重要な理由
多くの組織が、他のストレージ選択肢よりもスケールアウトNASを選ぶようになっています。比較的安価で拡張性があり、よりローカルに近い制御が可能だからです。ここでは、このソリューションの人気が高まっているその他の8つの要因を紹介します。
- エッジコンピューティング—製造業におけるロボティクスやIoT、IoTを中心としたフィールド業務の増加、リモートオフィスやリモートワーカーの増加により、ITの多くがエッジへ移行しています。これらは、ローカルストレージを利用し、データをリアルタイムで中央データセンターやクラウドへ転送する必要がないことで、より効率的に稼働します。
- 遅延の低減—企業のデータ活動の中心近くに配置されたスケールアウトNASデバイスは、データをデータセンターやクラウドへルーティングする際に発生する遅延を低減できます。
- 通信コスト—企業のエッジにデータストレージを配置し、そのデータを中央データセンターやクラウドへ送信するタイミングを計画的に決めることで、通信コストを削減できます。データのアップロードはデータ転送のピーク時間帯以外に行うことができ、場合によってはまったく行う必要がありません。
- 拡張性—各NASデバイスは数テラバイトから複数ペタバイトまで、さまざまな量のデータを保存できるため、企業はニーズに応じて規模を拡張できます。
- セキュリティ、プライバシー、知的財産—スケールアウトNASでプライベートクラウドを構築することで、企業は自社データと独自の知的財産(IP)のセキュリティ、ガバナンス、プライバシーを直接管理できます。
- 統合管理—NASボックスは相互運用性が高く、中央のネットワーク管理者が単一の画面からすべてのNASのアクティビティを監視・実行できる、統合された単一のストレージグループとして管理できます。
- 自動バックアップ—スケールアウトNASは、企業のフェイルオーバー戦略の一環として、システムやデータに問題が発生した場合に自動バックアップとフェイルオーバーを実行するよう構成できます。これにより、サービスを中断することなく企業システムをシームレスに稼働させられます。
- 容易なセットアップ—NASデバイスはWebインターフェースから簡単に構成できます。
スケールアウトとスケールアップのストレージ
スケールアウトストレージは、社内企業ネットワーク全体に分散配置された複数のネットワーク接続ストレージデバイス、すなわちノードにまたがって、ストレージを水平方向に拡張します。一方、スケールアップストレージは、1台のストレージアプライアンスにHDDやSSDを追加して、ストレージ容量を垂直方向に拡張します。ほとんどの企業は、スケールアウトとスケールアップの両方を組み合わせて利用しています。
詳しくはスケールアウトとスケールアップのストレージをご覧ください。
まとめ
スケールアウト型のネットワーク接続ストレージは、いくつかの理由からネットワークストレージの導入方式として人気が高まっています。企業がIoTをさらに導入し、リモート業務を拡大する中で、リモート業務拠点ではストレージと処理に大きな負荷がかかること、またリアルタイムのデータ通信にはコストがかかることを考えると、中央データセンターやクラウドとのリアルタイム通信を常にサポートするのが合理的とは限りません。
社内の拠点にスケールアウトストレージを導入することで、企業はデータ、システム、知的財産をより適切に保護できます。さらに、スケールアウトNASストレージはインストールと保守が容易で、費用対効果にも優れています。そのため、今後も長期にわたり、企業ネットワークの導入環境で重要な役割を果たし続ける可能性が高いでしょう。
詳しくはエンタープライズデータストレージの5つのタイプをご覧いただき、企業がデータを保存・管理するさまざまな方法について学んでください。