仮想化とは、プロセッサー、メモリ、ストレージ容量など、デバイスのあらゆる要素を再現するコンピューター・ハードウェアの仮想レイヤーをソフトウェアで作成することだ。
仮想化技術を使えば、1台のコンピューターを複数の仮想コンピューターに分割し、それぞれを別個のデバイスとして相互に動作させられる。一般に仮想マシン(VM)と呼ばれる。仮想レイヤーは元のデバイスを再現することも、別のデバイスの代替バージョンを作成することもできる。
世界の仮想化市場について、詳しく見ていこう。
以下の企業による仮想化の利用例:Nasdaq、Bowmicro、Nilkamal、Isala、University of Pisa、AeCのケーススタディを紹介する。
仮想化市場
仮想化ソフトウェア市場の規模は、2020年に387億ドルと推定された。2020年から2026年までの分析期間に年平均成長率(CAGR)25.4%を維持すると予測され、期間終了時には1,494億ドルに達する見通しだ。
世界の仮想化ソフトウェア市場を地域別に見ると、次のようになる。
- 米国市場の2021年の規模は176億ドルと推定された
- 中国市場は2026年までに1,650億ドルに達すると予測され、CAGRは27.2%
- 日本とカナダは、2020年から2026年にかけて、それぞれ19.4%、24.1%の成長が予測されている
- 欧州では、ドイツのCAGRが約21.4%と特に高い水準にある
業種別では、銀行・金融サービス・保険(BFSI)、IT、通信業界が仮想化需要を押し上げると予想される。
仮想化におけるその他の注目すべき業種には、次のようなものがある。
- 教育
- 公共安全
- 医療
- 製造
- 小売
- 政府
アプリケーションを物理サーバー上で直接実行する方式から、さまざまな仮想化技術を利用する方式への移行は段階的に進んだが、ITの効率化やメンテナンス負担・コストの削減に寄与した。より多くの種類の仮想化技術が市場に投入されるにつれ、仮想化の利用は拡大すると予想される。
Spiceworksの調査では、アプリケーション仮想化の導入率が2021年までに39%から56%へ上昇すると予測された。データ、サーバー、ストレージの仮想化技術についても、同様の成長パターンが予測された。
「仮想ワークロードをパブリッククラウドへ移行することのメリットとデメリットを検討している組織は、オンラインで助言を探すか、道筋を示してくれる信頼できるアドバイザーに相談すると考えてよい」とSpiceworksは記している(2020年の「State of Virtualization Technology」レポート)。
Spiceworksによると、市場では「多様な仮想化の導入が進み、ソフトウェア定義型およびクラウドベースの技術へと移行している」。
詳しくはストレージ仮想化市場を参照されたい。
仮想化の機能
仮想化の概念は多種多様なハードウェアやデバイスに適用でき、実際のデバイスを用意せずに、その仮想バージョンを作成できる。
ここでは、仮想化技術の主な種類を紹介する。
ストレージ仮想化
ストレージ仮想化は、データストレージに使われる複数のサーバーを、ストレージにアクセスするソフトウェアやシステムからは1つのストレージプールに見えるようにする。ストレージを仮想化すれば、物理ストレージに比べて、より高度な制御と柔軟性を実現できる。
企業は、拡張時にサーバーをアップグレードする必要を気にせず、保有する任意のハードウェアリソースをストレージに利用できる。
デスクトップ仮想化
デスクトップ仮想化では、エンドユーザーがアクセスする物理デバイスから、デスクトップ環境とそのアプリケーションを分離できる。
仮想デスクトップにより、ユーザーは中央集中型または外部委託のハードウェアのリソースを利用して、デスクトップへリモートアクセスできる。従来のデスクトップと比べ、仮想デスクトップは大規模展開が容易で、全体的なコストを削減しながらセキュリティを向上させられる。
ネットワーク仮想化
ネットワーク仮想化は、複数のネットワークのハードウェアを1つの最適化された仮想ネットワークに統合し、リソースをより効率的に利用できるようにする。
アプリケーション仮想化
アプリケーション仮想化は、コンピューターのアプリケーションを、それが実行されるハードウェアやOSから分離する。アプリケーションを完全に仮想化すれば、デバイスにインストールしなくてもアクセスできる。
これにより企業は、各デバイスを個別に最適化するのではなく、アプリケーションをホストするサーバー上のRAMとCPUを一元化して最適化できる。
サーバー仮想化
サーバー仮想化は、物理サーバーを複数の仮想サーバーに分割し、それぞれを分離された状態で独立して動作させる。各仮想サーバーはマシンの異なる部分にアクセスし、異なるOSを実行できる。
サーバー仮想化技術は、同じサーバーで多数のアプリケーションを実行できるようにすることで、必要なハードウェアの量を減らし、コストを大幅に抑えられる。
仮想化のメリット
仮想化技術の主なメリットには、次のようなものがある。
- ITコストの削減
- ハードウェアリソースの効率的な利用
- サービス停止時間の最小化または解消
- 事業継続性の確保
- より効果的な災害復旧(DR)対応
- エコシステムの応答性向上
- 高可用性とレジリエンス
「現在、組織はデータとアプリケーションをデータセンターに集約し、組織内のすべてのユーザーに対して、管理性、セキュリティ、パフォーマンスを向上させた仮想ワークスペースを提供できる。同時に、ダウンタイムとサポートコストも削減できる」とForbesのAnne Hechtは述べている。
「IT部門は、組織のインフラ全体を可視化し、プロアクティブな監視を行うことで、大規模な仮想化環境も容易に管理できる」
仮想化のユースケース
さまざまな業界の組織が仮想化をどのように利用しているか、いくつかの例を紹介する。
Hall AGとCitynet
Hall AGは、オーストリアのHallに住む1万3000人の住民に電力、暖房、水道サービスを提供する主要事業者だ。インターネット接続と通信の管理には、ITサービスプロバイダーのCitynetを利用している。
多数のデジタルシステムやサービスから流入する大量のデータに対応するため、Citynetは高可用性ストレージプラットフォームであるミラーリングされたデータストアの構築に、IBM Spectrum Virtualize HyperSwapを利用することにした。
「IBM Spectrum Virtualizeを搭載したIBM FlashSystemを使えば、発電所の制御システムを含む重要インフラサービスを、他に類を見ないパフォーマンスと可用性で安定して運用できる」とHall AGのプロジェクトリード、Christian Vojakは述べている。
「FlashSystemによって、必要に応じてハイブリッドやマルチクラウドの導入を含む、新しい技術や構成を柔軟に検討できるようになった」
IBMの導入により、Hall AGとCitynetは電力を40%削減し、管理作業を半減させ、市民向けサービスの容量を3倍にすることができた。
Department of Polytechnic and Community College Education
Department of Polytechnic and Community College Education(DPCCE)は、マレーシアの教育制度の整備を担う高等教育省(MOHE)の一部門だ。DPCCEは、マレーシア国内の36校の公立ポリテクニックと100校を超えるコミュニティカレッジの教育・訓練を管理している。
DPCCEの学習管理システム(LMS)は、教育施設全体で10万人を超える学生と7300講義からのトラフィックを処理している。増加する需要に対応するため、同局はLMSをAWSクラウドへ全面移行することを決めた。
「CIDOS LMSをAWSクラウドへ移行することは、拡張性のためにシステムリソースを仮想化するだけではない。最大のメリットは、すべてのワークロード、サービス、アプリケーションを安全に24時間365日運用・拡張するための管理・保守サービスを備えた、フルマネージドシステムを利用できることだ」とMOHEのシニアアシスタントディレクター、Tajul Azhar Mohd Tajul Ariffinは述べている。
AWSへ移行したことで、DPCCEはコストを30%削減し、各種サービスのダウンタイムを解消するとともに、教育に振り向けるリソースを最適化できた。
eSilicon
eSiliconは、ハイエンド半導体の設計・製造を専門とする特定用途向け集積回路(ASIC)開発企業だ。5Gインフラ、人工知能(AI)アプリケーション、ネットワークプロジェクトに使われる素材を提供している。
ICとエンジニアリングのワークフローをクラウドへ移行する目標を掲げ、Google Cloudと、そのパートナーであるCitrixおよびWiproの支援を求めた。eSiliconは、エンジニアの開発業務向けに仮想デスクトップアプリケーションのフレームワークを構築できた。
「Google Cloud Platformの大きなメリットの1つは、ベトナムやシンガポールからベルギー、イタリアまで、最適化された環境にデータセンターを共同配置できることだ。その拠点網を活用して、アプリケーションとエンジニアリングワークフロー全体のレイテンシー管理を改善している」とeSiliconのCIO兼グローバルIT担当VP、Naidu Annamaneniは述べている。
「現在は、利用したコンピューティング能力とVMの分だけ料金を支払えばよいため、過剰な支出がないと分かる。また、この新しいGoogle Cloudスタックとコンピューティング能力によって、従来のIT上の制約も取り除けた。Google Cloudなら、拡大する顧客基盤の需要に対応して、必要に応じて規模を拡張できる」
Googleと協力することで、eSiliconはVM管理コストを最大60%削減し、複雑なエンジニアリング作業を簡素化するためにワークロード管理を最適化できた。
仮想化プロバイダー
市場をリードする仮想化ソフトウェアプロバイダーには、次のような企業がある。
- VMware
- Citrix
- Microsoft
- Red Hat
- Oracle
- Dell Technologies
- Datadog
- AWS
- Solarwinds Corporation
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