テープバックアップ、つまり磁気テープへのデータ書き込みは、数十年にわたって使われてきた古いメディアです。ディスクからフラッシュ、クラウドへと進んだデータストレージの革新により、速度の向上、大容量化、よりスケーラブルなソリューションが実現し、業界では2000年代初頭にもテープは時代遅れだとする見方が広がりました。しかし、テープはエンタープライズのデジタルストレージで今も役割を担っています。組織のデータ需要が指数関数的に増大し、大量のデータを手頃なコストで保存する手段が求められるなか、そのメリットを認識する企業が増え、利用はさらに拡大しています。
この記事では、テープを利用するメリットと限界、テープが適しているユースケース、そしてエンタープライズのデータストレージ運用にうまく統合するためのベストプラクティスを紹介します。
目次:
テープバックアップとは
テープバックアップでは、エンタープライズシステムからテープドライブまたはテープライブラリにデータを送り、カートリッジに収められた磁気テープへ書き込みます。小規模な運用では、テープの装填、取り出し、保管を手作業で行う必要があります。大規模な運用では、規模のメリットを生かしてプロセスを自動化し、手作業による介入を不要にできます。
コンピューターが登場する1960年代や1970年代の映画を見ると、大きなリールの磁気テープが回転している場面が登場します。かつてテープはデータを保存する主要な手段でした。しかし、ハードディスクドライブ(HDD)の技術が進歩すると、企業はストレージメディアとしてテープを徐々に使わなくなりました。
現在、テープはどのように使われているか
テープは今もエンタープライズのバックアップ計画で役割を果たしていますが、主役ではありません。現在、テープバックアップが主要な手段になることはほとんどなく、データはまずディスクまたはクラウドに書き込まれ、そこに保持されるか、より迅速なバックアップのためにディスク上で一時保存されてからテープに書き込まれます。
あるいは、3-2-1バックアップルールを採用する組織では、重要なデータを3つコピーし、少なくとも2種類のメディアに保存し、1つをオンサイト、もう1つをオフサイトに保持するという原則に基づき、テープをストレージメディアの1つとして使用します。多くのクラウドプロバイダーもテープを使用している点には注意が必要です。
テープによるデータストレージにはさまざまな形式があります。Linear Tape Open(LTO)は現在最も普及している形式で、IBM、Fujifilmなどから多額の投資を受けています。LTOには将来数年分にわたるロードマップがあり、容量、性能、TB当たりのコストが着実に改善される見通しです。その他の形式には、Digital Linear Tape(DLT)、Digital Audio Tape(DAT)、Advanced Intelligent Tape(AIT)があります。
テープバックアップのメリット
テープには、ハードディスクドライブやフラッシュストレージに対するメリットがあります。特に、大量のバックアップデータやアーカイブデータを保存する場合に有効です。主なメリットは次のとおりです。
コスト
サステナビリティに関する最近の調査によると、容量が年間35%増加する10PBのストレージを10年間所有した場合の総保有コスト(TCO)は、テープのほうがディスクより約8分の1になります。Amazon Web Services(AWS)、Google、Microsoft Azureはいずれも、コールドストレージ層でテープを大いに活用しています。
ディスク容量の削減
すべてのデータをディスクに保持する組織では、コストが積み上がり、電気料金も増大します。Storage Switzerlandによると、エンタープライズのバックアップリポジトリは通常、継続的に使用する本番データの10倍の規模になります。アクセスされない可能性のある大量のデータをディスクに保存する代わりに、組織はそのデータをテープに移し、より高い性能が求められるアプリケーションやデータのためにディスクを確保できます。
セキュリティ
テープは安全なデータストレージを実現します。テープカートリッジをオフラインにしてネットワークから切り離しておけば、ランサムウェア攻撃やその他の不正アクセスの影響を受けません。さらに、Linear Tape Open第9世代の仕様には、ハードウェアベースの暗号化、変更不能なWrite Once, Read Many(WORM)機能、Linear Tape File System(LTFS)とRecommended Access Order(RAO)による高速なデータアクセスなど、多層的なセキュリティサポートが含まれています。
転送速度
LTO-9テープカートリッジ1本には、圧縮データで45TB(ネイティブで18TB)を保存でき、転送速度は400MB/秒(ネイティブ)、または2.5:1の圧縮時で1,000MB/秒に達します。これはHDDより大幅に高速です。
密度
LTOは、最新のHDDと比べて約2桁優れた面密度で動作します。18TBのディスクと比較すると、最新の18TB LTO-9に必要な面密度はごくわずかです。
サステナビリティ
Brad Johns Consultingの調査によると、コールドデータや非アクティブなデータをディスクからテープに移すことで、二酸化炭素排出量を最大97%削減できます。米国のデータセンターは全電力消費量の約2%を消費しており、そのデータセンター電力の約20%をストレージが占めています。テープが電力を使うのはデータの読み書きを実行しているときだけです。棚に置かれたテープカートリッジやテープライブラリ内で待機しているカートリッジは、常に回転しているディスクとは異なり、エネルギーを消費しません。
長寿命
ハードディスクドライブ上のデータは徐々に劣化し始めます。ディスク上に5年を超えてデータを保持するのはトラブルのもとですが、テープは30年以上の寿命を実現します。
テープバックアップの限界
テープには多くのメリットがある一方で、いくつかの限界もあります。主なものは次のとおりです。
初期導入コスト
ほとんどの企業はすでにサーバーとディスクアレイを保有しています。テープを追加するには、テープドライブやテープライブラリという形で、さらなるハードウェアへの投資が必要です。
ランダムアクセス不可
ディスクに書き込まれたデータには、ディスク上のどこからでもアクセスできます。一方、テープは順次アクセスするため、復旧する特定のファイルを見つけるまでテープを読み進めるのに時間がかかる場合があります。
オフサイトからの復旧が遅い
オフサイトかつオフラインにあるテープは、復旧に必要な場所まで物理的に輸送しなければなりません。そのため復旧に1~2日追加でかかる可能性があり、事業継続の観点では理想的でない場合があります。
テープバックアップのユースケース
複数の新しいストレージメディアが登場した現在でも、テープはエンタープライズのデータストレージで重要な役割を果たせます。テープバックアップの主なユースケースは次のとおりです。
アーカイブ
データアーカイブは、低コストでデータをオフラインに保存できることから、テープの主なユースケースになっています。ドライブは読み書き中にのみ動作するため、ディスクストレージデバイスよりも消費電力が少なく、発熱も抑えられます。また、アーカイブされたデータの大部分はアクセスされない可能性があるため、数PBを超えるデータ量ではテープのほうがディスクより低コストです。多くの組織では、90日以内に使用されたホットな本番データはディスクに保持し、それ以外をテープアーカイブに保存する方法が最適だと考えています。
アクティブアーカイブ
アクティブアーカイブは、テープの性能と速度に関する弱点を解消するソリューションとして発展しました。最新のアクティブアーカイブソリューションでは、テープに保存したデータをオンラインの状態に保ち、迅速に復旧できます。オブジェクトやファイルのリストアは数分で実行可能です。アクティブアーカイブは、テープの低コスト、大容量、長寿命、可搬性を生かし、大量のデータを簡単にアクセスできるオンライン状態で維持します。
プライマリーバックアップ
既存のテープシステムへの投資やITチームの方針を理由に、テープをプライマリーバックアップメディアとして使い続けている企業もあります。その場合、通常はバックアップをテープに移す前にディスク上で一時保存します。これにより、ミッションクリティカルなシステムを中断したり、ネットワークを過負荷にしたりすることなく、より高速にバックアップできます。
セキュリティ
ランサムウェア攻撃の頻度が高まるなか、テープはミッションクリティカルなデータの安全なバックアップを維持する手段として、より魅力的な選択肢になっています。ディスクやクラウドに保存されたデータは感染する可能性がありますが、先進的な組織はオフラインのテープにコピーを保存し、安全を確保しています。
テープバックアップのベストプラクティス
テープをより大きなデータストレージおよびバックアップ戦略に組み込むことで、組織は多くのメリットを得られます。しかし、テープは一度設定すれば放置できるソリューションではありません。適切な管理、保管、メンテナンスが必要です。ここでは、守るべき主なベストプラクティスを紹介します。
- テープを定期的にテストする。テープにデータを保存して、復旧時にうまくいくことを期待するのではなく、データの一部または全部を失った状況を想定したテストを実施し、復旧にかかる時間と、どの程度のデータを復旧できるかを測定します。その結果に応じてバックアップのポリシーと手順を調整し、成果を改善します。
- テープの保持ポリシーを策定する。テープにバックアップを次々と際限なく保存している企業もありますが、これは蓄積していきます。どのテープをいつまで保持し、いつ廃棄するかについて、データ保持ポリシーを設定しましょう。
- テクノロジーを常に最新に保つ。テープ技術は今も進化しており、ほぼ2年ごとに新世代が登場します。システムの後方互換性を維持するため、アップグレード後も古いハードウェアを保持しましょう。
- オフラインコピーを維持する。少なくとも1つの完全なバックアップを、常にオフサイトに保管してください。サイト全体に障害が発生した場合、そのバックアップが窮地を救う可能性があります。
- テープを適切に保管する。テープストレージ 環境では、熱、湿気、ほこり、直射日光、磁界への曝露を最小限に抑える必要があります。テープは定期的にクリーニングし、ほこりや汚れが付着しないようにしましょう。
- 整理整頓する。テープのラベル付けシステムを作成し、各テープの内容と作成日を記録したログを保管しましょう。
- セキュリティ機能を有効にする。最新のテープシステムには通常、セキュリティ機能が搭載されています。テープを暗号化し、変更不能にし、マルウェアから保護するため、これらの機能を必ず有効にしてください。物理的なセキュリティも重要です。テープは施錠して保管し、アクセスを許可するのは認証済みのユーザーだけにしましょう。
まとめ
データストレージメディアに新しい選択肢が登場しているにもかかわらず、テープは決して廃れた時代遅れの技術ではありません。分野によっては、そのイノベーションのロードマップがディスクを上回っています。ただし、ディスクかテープかの二者択一ではありません。どちらもエンタープライズのデータストレージとバックアップおよびリカバリ戦略で役割を果たします。
それぞれにメリットとデメリットがあり、多くの場合、組織は両方を導入すべきです。データ量が少ない企業はディスクだけで対応できるかもしれませんが、バックアップまたはアーカイブの容量が数PBを超える組織にとって、テープはより手頃で安全な選択肢です。
詳しくはエンタープライズのバックアップとリカバリに関する包括的なガイドをお読みいただき、成功するバックアップおよびリストア戦略に必要な要素について学んでください。