NVMe over Fabrics(NVMe-oF)は、不揮発性メモリーエクスプレス標準を利用し、ローカルエリアネットワーク全体で高速なデータ転送を実現するストレージネットワーキングの方式です。ネットワーク通信に用いるメッセージングモデルによって、より長い距離でもデータを高速に送信できるため、特にデータセンター環境に適しています。本ガイドでは、NVMe-oFと、それが利用するネットワークプロトコル、主なメリットと弱点について解説します。
NVMe over Fabricsとは?
NVMeは、ソリッドステートドライブ向けに設計されたストレージおよび転送仕様で、データへのアクセスと応答時間を大幅に高速化します。Peripheral Component Interconnect express(PCIe)バスを介してフラッシュストレージにアクセスする仕組みで、従来の機械式ディスクやオールフラッシュSSDが対応するコマンドキュー1本に対し、最大64,000本のコマンドキューをサポートします。
NVMe-oFは、Fibre Channelやイーサネットなどのネットワークファブリックを利用して、こうしたメリットをネットワークに拡張し、サーバーとデバイス間のデータ転送速度を高めます。NVMe-oFを使えば、マシンが異なる場所にあっても、ローカルエリアネットワーク上でサーバーとコンピューター間のデータを転送できます。NVMe-oFは、それを支えるネットワークインフラを備えたデータセンターなどの環境に適しています。
NVMe-oFの仕組み
単一のデバイスでPCIeバスを利用する代わりに、NVMe-oFはメッセージング技術を使ってネットワーク経由で通信し、複数のネットワーク標準と組み合わせて構成できます。代表的なものをいくつか紹介します。
- Fibre Channelは、光ファイバー技術を使って、サーバーやコンピューター、データセンターなどの遠隔地間でデータを送信します。NVMeをFibre Channelネットワーキングと併用する構成は、NVMe/FCと呼ばれます。
- Remote Direct Memory Access(RDMA)は、オペレーティングシステムを経由せずに2台のマシン間でデータを送信します。RDMAプロトコルには、Infinibandと、RDMA over Converged Ethernet(RoCE)が含まれます。NVMeをInfinibandと併用する構成はNVMe/IB、コンバージドイーサネットでNVMeを利用する構成はNVMe/RoCEと呼ばれます。
- Transmission Control Protocol(TCP)は、通常はインターネット上で、ネットワーク経由でデータパケットを送信するための標準です。NVMeと組み合わせて構成する場合は、NVMe/TCPと呼ばれます。
企業がどの標準を選択するかは、既存のネットワークプロトコルに加えて、データセンターのアーキテクチャとニーズによって決まります。
NVMe-oFのメリット
NVMe over Fabricsは、正常に導入できれば、ベンダーロックインの低減、ネットワークの柔軟性、高いデータ転送速度など、企業に複数のメリットをもたらします。
ベンダーとネットワークの柔軟性
組織はNVMe構成に異なるネットワークプロトコルやストレージアレイを選択できるため、ベンダーロックインが起こりにくくなります。NVMe over Fabricsは、適切に構成すれば、異なるネットワークやストレージソリューションをサポートしたい企業に柔軟性を提供します。
データ転送速度
NVMeはその設計上、SASやSATAなどの前世代の規格より高速に動作します。NVMe-oFは、ミッションクリティカルなアプリケーションを支える速度で保存データを処理でき、オブジェクトストレージのデータを迅速に取得するなど、データセンターの処理要件にも対応できます。
並列処理
NVMeはキューの深さが非常に大きいため、多数のリクエストを同時に処理できます。この並列性は、メモリーを大量に消費するアプリケーションを複数利用する企業にとって有益です。ローカルエリアネットワークが広範囲に分散している企業では、NVMe over Fabricsによって、単一のアプリケーションを支える単一のサーバーだけでなく、ネットワーク全体にこの並列性を拡張できます。
NVMe-oFの代替技術
NVMe over Fabricsは新しい技術であるため、代替技術は主に、NVMeをサポートしていない古いストレージネットワーキングプロトコルであるiSCSIやISERです。企業がこれらをNVMeより選ぶのは、既存の技術が対応しているため、あるいはITスタッフがより使い慣れているためでしょう。
iSCSIは、SCSIをイーサネット接続で動作させるネットワークプロトコルです。最大のメリットは、広く普及していることです。NVMe over Fabricsに不慣れなストレージチームやネットワークチームは、iSCSIの利用経験が豊富である可能性が高く、NVMe-oFとは異なり、組織がiSCSIの技術をすでに導入済みである場合もあります。iSCSIの大きな欠点は速度で、NVMe-oFより低速です。
同様に、iSCSI Extensions for RDMA標準(ISER)は、iSCSIでRDMAを利用できるようにします。ISERは、より広い帯域幅を提供し、標準的なTCP/IP処理のオーバーヘッドを回避しますが、iSCSIと同様にNVMeをサポートしていません。
結論:NVMe over Fabrics
NVMe-oFは、個々のマシンではなく、企業ネットワーク全体を高速化するストレージおよび転送仕様です。複数のミッションクリティカルなアプリケーションや、高速なストレージ処理が必要な企業にとって、特に有益です。NVMe-oFは有望な技術ですが、一貫性と信頼性を確保して導入する必要があります。企業に真のメリットと既存のストレージインフラへの付加価値をもたらすには、ストレージチームがその仕組みを理解し、自社のニーズに適しているか判断しなければなりません。
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