この記事では、主要プロバイダーとその料金モデルから、クラウドストレージプロバイダーを選ぶ際に考慮すべき点まで、2023年のクラウドストレージ市場を理解するために知っておくべき料金情報をすべて紹介します。
クラウドストレージソリューションの平均的なコストを見積もるのは、関係する要素が非常に多いため、極めて複雑です。最も費用対効果の高いサービスを見極めるために主要プロバイダーを一社ずつ比較する作業も、多くの大手ベンダーが幅広いサービスを提供していることから、複雑で時間がかかります。知っておくべきポイントを紹介します。
目次:
クラウドストレージの料金はどのように決まる?
料金は、データセンターの種類、冗長性と可用性のレベル、保存データ量、無料枠の適用対象かどうかといった要素によって決まります。ベンダーやデータの種類によっては、データ移行料金、データアクセス料金、カスタマーサポートや従業員研修の利用料金が発生する場合もあります。
独自の料金モデルを採用しているベンダーもありますが、クラウドベースのストレージソリューションの料金体系は比較的シンプルです。一般的に、プロバイダーの課金方法は次の2通りです。
- ギガバイト(GB)単位の従量制。保存データの総容量が増えるほど単位当たりの料金が下がる、従量課金モデルに近い方式です
- 段階制。ストレージ容量の区分ごとに定額料金が設定され、通常はユーザーがデータをより効率的に管理するよう促します
クラウドベースのストレージには、機能するために必要な追加機能が複数含まれる傾向があります。また、多くのベンダーは、クラウドへのデータのアップロード・ダウンロードを問わず、データ転送量や帯域幅に応じて異なる料金を設定しています。基本プランに一定量のデータ転送帯域幅を含めるプロバイダーもあれば、受信転送は無制限とし、データの送信転送には料金を課すプロバイダーもあります。
もう1つの要素は、データへのアクセス頻度と全体的な可用性です。一般論として、データへのアクセスや変更の頻度が高いほど、ストレージコストも高くなります。バックアップやアーカイブを目的としたクラウドストレージは、常時利用するデータのストレージよりも手頃な料金になる傾向があります。
バックアップとリカバリー、データレプリケーション、高度なセキュリティやユーザー認証機能などの追加サービスは、より高い料金で提供される場合があります。ただし、これらはオプションであることが多く、コスト削減のために社内で管理する企業もあります。
主要6社のクラウドストレージプロバイダー料金比較
クラウドストレージ技術は比較的新しく、組織や企業から広く注目を集めるようになったのは、わずかここ数十年のことです。市場はなお成長していますが、現時点では少数のプロバイダーが大半を占めています。
ここでは、主要6社のクラウドストレージプロバイダーの料金を紹介し、十分な情報に基づく意思決定を支援します。
1. Amazon Simple Storage Service
Amazon Simple Storage Service(S3)は、Amazon Web Servicesの主要クラウドストレージソリューションです。スケーラビリティ、ほぼ100%の稼働率、高度なセキュリティ機能を備えています。
AWSのストレージ料金は地域によって大きく異なり、特定の地理的地域でデータセンターやサーバーをホスティングするためのベンダーのコストによって決まります。
無料期間:S3は顧客登録後1年間無料で利用できます。最大5Gのストレージ容量、20,000件のGETリクエスト、2,000件のPUTリクエスト、月15GBの送信データ転送が含まれます。
料金:AWSの料金は、ストレージ容量50TBの場合は1GB当たり0.023ドル、450TBの場合は1GB当たり0.022ドル、500TBの場合は1GB当たり0.021ドルからです。
追加料金:AWSではデータリクエストに追加料金がかかりますが、DELETEリクエストは無料です。S3へのデータ転送は無料ですが、サービスから月1GBを超えるデータを転送すると料金が発生します。料金は転送量と転送先によって異なります。
詳しくは:より正確な見積もりを得るため、AWSは月額コストのSimple S2 Calculatorを提供しています。
2. Microsoft Azure Blob Storage
Microsoft AzureのBlob Storageは、スケーラビリティと、強い整合性およびオブジェクトの可変性を実現するアーカイブストレージで知られています。複数のストレージタイプにも対応しています。
無料期間:Microsoftは新規ユーザー向けに無料アカウントを提供しています。30日以内に使い切る必要がある200ドル分のクレジットに加え、最初の12カ月間は、5GBのLRS-Hot Blob Storage、月間200万件の読み取り、200万件の書き込み、200万件の書き込み/一覧表示操作が含まれます。
料金:Blob Storageの料金モデルは、冗長性のレベルとデータセンターの場所によって異なります。Azureでは、次のアカウントタイプも提供しています。
- Blob StorageとGeneral Purpose v1のアカウントは、より限定された機能セットを低料金で提供します
- General Purpose v2は、完全な機能セットをより高い料金で提供します
追加料金:読み取りおよび書き込みリクエストには追加料金が必要ですが、DELETEリクエストは無料です。また、選択した冗長性のレベルによって、データの取得、書き込み、他のAzureリージョンへの転送に追加料金が発生する場合と発生しない場合があります。
詳しくは:Microsoft AzureのWebサイトでは、コスト見積もり用の料金計算ツールと、総保有コスト(TCO)計算ツールを提供しています。クラウドストレージとオンプレミスストレージの比較が可能です。
3. Google Cloud Storage
Google Cloud Storageは、Googleが提供する統合オブジェクトストレージソリューションです。高頻度アクセス、低頻度アクセス、最低頻度アクセスなど、複数のストレージ階層を提供しています。Googleは、地域別およびアクセスレベル別の料金が、他のプロバイダーと比較してユーザーに優しいことで知られています。
無料:無料枠には、新規ユーザー向けの300ドル分のクレジットに加え、北バージニア以外の米国リージョンにおける5GBのリージョナルストレージ、5,000件のクラスA操作、50,000件のクラスB操作、1GBのネットワークエグレスが含まれます。(300ドル分のクレジットは最初の12カ月以内に使う必要がありますが、無料枠のストレージは無期限で利用できます。)
料金: 料金は北米ベースの標準ストレージで月額1GB当たり0.02ドルから始まり、アーカイブ、Coldline、Nearlineのストレージソリューションでは月額1GB当たり約0.01ドルまで下がります。
追加料金:Googleは、顧客がデータを転送する際にネットワーク使用料金を課します。操作にも料金がかかりますが、可能なリクエストの分類方法は他のベンダーと異なります。一部のGETリクエストとPUTリクエストは他より高額ですが、DELETEリクエストは無料です。
詳しくは:GoogleのGoogle Cloud料金計算ツールでは、API、Webページ、JSONファイルを通じて料金データを確認できます。
4. IBM Cloud Object Storage
IBMのCloud Object Storageは高いスケーラビリティを備え、耐久性、復元性、セキュリティを重視して設計されています。ほぼ100%の耐久性を誇り、同社のAsperaサービスを介した高速データ転送も統合されています。
データセンターの場所に応じて復元性が異なる複数の選択肢を提供しています。データを同一地域内の3つの異なるリージョンに保存するクロスリージョンストレージから、同一リージョン内の複数のデータセンターに保存するリージョナルストレージ、冗長性を最小限に抑えた単一データセンターまで対応します。また、頻繁にアクセスするデータ向けのストレージから、アーカイブおよびバックアップ用ストレージまで提供しています。
無料:Liteプランは、実質的にIBMの無料枠です。25GBのストレージを無料で利用でき、他社の無料枠の多くよりも充実しています。
料金: 有料オプションでは、料金はコールドストレージの1GB当たり0.0094ドルから、頻繁にアクセスするストレージの1GB当たり0.0237ドルまでです。
追加料金: IBMはリクエストに対して異なる料金を課しており、1,000件のPUTリクエスト当たり0.006ドル、10,000件のGETリクエスト当たり0.005ドルからとなっています。外向きデータ転送には、最初の50TBが1GB当たり0.09ドル、次の100TBが1GB当たり0.07ドル、次の350TBが1GB当たり0.05ドルかかります。
5. Oracle Cloud Object Storage
Oracle CloudのWebサイトによると、Object Storageは容量無制限で、耐久性とデータ整合性を高めるため、複数の障害ドメイン間でデータを自動的にレプリケーションおよび修復します。そのほかの主な機能には、ストリーミングやビッグデータのワークロードを支える高スループット、統合ID管理、サーバー側暗号化、容易な導入があります。
Oracleは、主要なパブリッククラウドベンダーの中で最もシンプルに見えるストレージ料金ページを用意しています。階層やデータセンターごとの異なる料金、多数の追加オプションがないためです。
無料:Oracle Cloudの無料枠は、他の多くのベンダーのプログラムとは少し仕組みが異なります。一定レベルのクラウドサービスを無料で提供する代わりに、Oracleは新規クラウド顧客全員に、アカウント開設後30日間で使える300ドル分を付与します。これをすべてストレージに使う場合、5TB分に相当します。
料金:同社は2種類の支払いプランを提供しています。
- Pay as You Go:初期費用や契約の縛りなし
- Monthly Flex:コスト計算ツールで得た見積もりに基づき、1年分のサービス料金を前払いする必要があります
ストレージだけでなくコンピューティングインスタンスも購入する場合は、Monthly Flexが有利な選択肢になる可能性があります。
追加料金:Oracleは月額でGETまたはPUTリクエスト10,000件当たり0.0034ドルを課金します。ただし、クラウドへのデータ転送、クラウドからのデータ転送には料金がかかりません。
詳しくは:より良い意思決定のため、OracleではCloud pricing calculatorを購入プロセスに緊密に統合して提供しています。
6. Alibaba Cloud Storage
アジア最大級のクラウドストレージソリューションおよび技術サービスプロバイダーの1社であるAlibabaは幅広いストレージ製品を提供しており、主に国際的な企業や法人を対象としています。そのポートフォリオには、オブジェクト、ブロック、ファイルベースのストレージに加え、ソフトウェアアプリケーション向けのゲートウェイストレージも含まれます。
無料:米国にサーバーを置くオブジェクトストレージでは、最初の50GBのストレージを無料枠で利用できます。
料金:最初の50GBを超える場合の料金は次のとおりです。
- 10GBから10TBまでのストレージ容量:1GB当たり0.0760ドル
- 10TBから50TBまでの容量:1GB当たり0.0690ドル
- 50TBから150TBまでの容量:1GB当たり0.0600ドル
合計150TBを超えるクラウドストレージの場合、Alibabaは1GB当たり0.0430ドルを課金します。
追加料金:Alibabaでは、最初の5億件のPUTリクエストは無料で、その後は10,000件当たり0.001ドルかかります。GETリクエストは最初の1億件が無料で、その後は10,000件当たり0.016ドルです。データの転入および転出にも、1GB当たり0.082ドルがかかります。
詳しくは:Alibabaでは料金計算ツールもクラウドサービス向けに提供しています。
クラウドストレージ料金比較表
適切なクラウドストレージソリューションを選ぶ際には、多くの要素が関係します。本記事の後半でその一部を取り上げますが、料金と料金モデルは選択を大きく左右する要因です。以下の表では、人気の高い6社のクラウドストレージプロバイダーの料金を比較しています。
| Alibaba Cloud Storage | Amazon S3 | Microsoft Azure Blob Storage | Google Cloud Storage | IBM Cloud Object Storage | Oracle Cloud Object Storage | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 無料枠 | 50GBを無期限 | 5GBを1年間 | 5GBを1年間 | 5GBを無期限 | 25GBを無期限 | 5TBを30日間 |
| 1GB当たりの料金 | 1最初の10TB:0.0760ドル/GB、次の40TB:0.0690ドル/GB、次の100TB:0.0600ドル/GB、150TB超:0.0430ドル/GB |
|
| 0.02ドル/GB |
| $0.0255 |
| 転入データ | 0.082ドル/GB | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 転出データ | 0.082ドル/GB |
| ホットデータは無料 |
|
| 無料 |
| PUTリクエスト |
| 1,000件当たり0.005ドル | 10,000件当たり0.05ドル | 10,000件当たり0.004ドルまたは0.05ドル | 1,000件当たり0.006ドル | 10,000件当たり0.0034ドル |
| GETリクエスト |
| 1,000件当たり0.004ドル | 10,000件当たり0.004ドル | 10,000件当たり0.004ドルまたは0.05ドル | 10,000件当たり0.005ドル | 10,000件当たり0.0034ドル |
| 1TBのコスト見積もり |
| 月額34.67ドル/TB | 月額24.90ドル/TB | 月額24.08ドル/TB | 月額26.40ドル/TB | 月額27ドル/TB |
クラウドストレージプロバイダーを選ぶ際の6つの考慮点
クラウド製品の料金と手頃さは、クラウドストレージプロバイダーを選ぶ際に考慮すべき多くの要素のうちの1つにすぎません。組織の要件に最も適した長期的な判断を下すには、意思決定の過程で念頭に置くべき考慮点がいくつかあります。
1. 手頃な料金
限られた予算で運営する組織にとって、クラウドストレージプロバイダーを選ぶ際には、手頃な料金であることが重要な考慮点となります。ストレージ容量や必要な機能は、長期的に見て無理なく利用できるものでなければなりません。データ取得料金、使い過ぎによる料金、支払い遅延料金などの隠れたコストは積み重なる可能性があるため、確認が重要です。プロバイダーと契約する前に、1GB当たりのコストや拡張性の選択肢、対応する支払い方法を含め、料金体系を慎重に評価してください。
2. セキュリティ
保管しようとしているデータの種類によっては、サードパーティーのクラウドにおけるセキュリティおよびプライバシー対策が異なる場合があります。通常、プロバイダーは、転送中および保存時のデータについて、自社クラウドのセキュリティ対策を維持・管理する責任を負います。
財務情報、医療記録、EU在住顧客の個人情報など、より機密性の高いデータには、追加の保護が必要になる可能性があります。そのため、ISO27001、GDPR、HIPAAなど、国内外のセキュリティ基準への準拠を提供するプロバイダーを検討してください。
3. ストレージ容量
必要なストレージ容量は、企業固有のニーズによって異なります。クラウドストレージプロバイダーは通常、数GBから数PBまで、さまざまなパッケージを提供しています。現在および将来のデータストレージのニーズを分析し、必要に応じてストレージ容量を増減できる拡張性を備えたプロバイダーを選択してください。
4. データ転送速度
クラウドとの間でデータをアップロードおよびダウンロードできる速度は、特にデータへのリアルタイムかつ24時間体制でのアクセスが必要な組織にとって極めて重要です。高速なデータ転送速度は、業務効率を高め、ダウンタイムを防ぎます。より実績のあるストレージプロバイダーは、多くの場合、強固なネットワークとインフラを備えており、データセンターの所在地に応じて、国内または州をまたぐ高速なデータ転送速度を保証できます。
5. 可用性と信頼性
クラウドストレージは、必要なときに常にアクセスできなければなりません。クラウドストレージソリューションの可用性と信頼性は、多くの場合、稼働率で示され、主要プロバイダーは99.9%以上の稼働率を保証しています。予期せぬダウンタイムは業務を中断させ、金銭面および評判の面で大きな損失につながる可能性があるため、信頼性について実績のあるプロバイダーを選ぶことが重要です。
6. カスタマーサポートとサービスレベル契約
クラウドプロバイダーが提供するカスタマーサポートのレベルも、考慮すべき重要な要素です。問題が発生した場合、プロバイダーがすぐに対応してくれるという安心感が必要になるためです。サポート窓口、応答時間、問題解決率を確認してください。
候補となるプロバイダーのサービスレベル契約(SLA)を慎重に確認してください。SLAには、セキュリティ、稼働率、データ保護に対する取り組みと、これらの約束を果たせなかった場合に受けられる補償が明確に記載されている必要があります。
結論:クラウドストレージ料金
2023年のクラウドストレージ料金を構成するさまざまな要素を理解することは、クラウドの活用を検討する企業や組織にとって不可欠です。手頃な料金、セキュリティ、ストレージ容量、可用性、カスタマーサービスなどの主要な要素は、ニーズに最適なクラウドサービスプロバイダーを決めるうえで重要な役割を果たします。これらの点を慎重に評価することで、十分な情報に基づいて判断し、予算とデータ要件を満たすだけでなく、貴重なデータ資産の安全性と可用性も確保できるソリューションを選択できます。