増え続けるデータの保存・処理需要への対応に苦慮している単一サーバー上でITワークロードを実行する企業には、2つの選択肢があります。より高性能なプロセッサーと大容量のストレージを導入して垂直方向にスケールアップするか、要求される性能を満たす新しいサーバーにワークロードを分散して水平方向にスケールアウトするかです。スケールアップとスケールアウトでは、どちらが優れているのでしょうか。簡単に言えば、組織の具体的なニーズによって異なります。それぞれの方法には、固有のメリットと制約があります。
この記事では、両方のアプローチを検討し、どちらが自社の要件に適しているかを判断できるようにします。
スケールアップとスケールアウトの違いとは?
簡単に言えば、スケールアップとは既存のサーバーをアップグレードして容量と性能を高めることです。一方、スケールアウトとはサーバーを追加し、ワークロードをそれらに分散して処理能力を向上させることです。両者は同じ問題、つまり現代の企業が抱えるあらゆるデータニーズに対応するためにメモリ容量と処理速度を高めるという課題に対する、異なる解決策です。
企業におけるデータ利用は、人工知能(AI)、IoT、アナリティクスなど、新たな処理・ストレージ能力を必要とする先端技術を取り入れる形で変化しています。こうした変化が相まって、IT部門は拡張戦略の策定を迫られており、その多くがスケールアップとスケールアウトのどちらを選ぶか決める必要に直面しています。
これらのアプローチは、個々のコンピューターやネットワーク接続ストレージ(NAS)から、強力なアプリケーションやデータベースを実行するサーバーまで、幅広いテクノロジーに適用できます。

スケールアップ:垂直方向のアップグレード
スケールアップとは、ワークロードをより高速に処理できるよう、サーバーに搭載されているプロセッサーを高性能なものに増強または交換するプロセスです。つまり、1台のサーバーという設置範囲内で処理能力を垂直方向に拡張することがスケールアップです。サーバーの「スケールアップ」は、次の2つの方法で実現できます。
- 既存のコアプロセッサーを追加または交換し、メモリを増設してサーバーを高速化する
- サーバーを複数の仮想オペレーティングシステムに分割し、同じコンピューター上で異なるジョブやワークロードを同時に実行する
例
スケールアップは、コンピューターの処理コンポーネントをアップグレードすることを意味します。ここでは特にサーバーを指しますが、ほかにも例があります。
家庭用コンピューターでは、新しいバージョンのオペレーティングシステムを導入すると、より多くのランダムアクセスメモリ(RAM)、あるいはより大容量で高速なソリッドステートドライブ(SSD)が必要になる場合があります。どちらのアップグレードも、そのマシンをスケールアップする方法です。また、データベースプロバイダーが新機能を提供する新バージョンを導入すると、顧客に新たな機能をもたらす一方で、処理要件も増加します。その需要に応えるため、企業はサーバーをアップグレード、つまりスケールアップすることができます。
メリット
スケールアップのメリットは、対象となるサーバーが1台だけなので、処理性能のアップグレードを簡素化できることです。必要なのは、処理能力とメモリを増強または交換してマシンを高速化することだけです。ソフトウェアを再構成する必要も、他のサーバーとの接続やワークロードの共有によって生じる統合や潜在的な遅延を心配する必要もありません。
デメリット
スケールアップのデメリットは、冗長性に欠けることです。処理が単一サーバーに依存しており、そのサーバーに障害が発生すると、ワークロードが停止します。これは、別のクラウドまたはデータセンターに処理とデータを複製することで軽減できます。ただし、システムの復旧とフェイルオーバーだけを目的とする場合でも、複数のサーバーを使うため、技術的にはスケールアウトだと主張することもできます。
組織の業務が分散している場合、スケールアップは実行可能な戦略ではありません。たとえば、遠隔地の製造工場ネットワークでIoT(モノのインターネット)やロボットが使われている場合や、小売店舗で個別のPOS業務をサポートするサーバーが必要な場合などです。
スケールアウト:水平方向のアップグレード
スケールアウトは、処理能力を高めるためのまったく異なるアプローチです。スケールアウトとは、既存の単一サーバーから組織のワークロードの一部を複数の異なるサーバーに移し、多様なワークロードを分散すること、つまり水平方向に拡張することです。
このアプローチでは、需要の増加に対応するため、既存の1台のサーバーでメモリと処理能力を何度もアップグレードすることなく、将来の拡張余地を確保しながら必要な処理能力とメモリ容量を提供できます。さらに、必要に応じて新しい各サーバーにメモリと処理能力を追加することも、各サーバー上に複数の仮想オペレーティングシステムを作成してワークロードを拡張することも可能です。
例
単一サーバーをアップグレードするのではなく、複数のサーバーにワークロードを分散してコンピューティング能力をスケールアウトする方法は、分散処理と呼ばれる仕組みから始まりました。分散処理(および分散型の業務運用)は、たとえば互いに独立して稼働する遠隔地の工場やオフィス、または自宅で働くフィールドベースの従業員を含むまでに拡大しています。
メリット
今日の企業にとって、遠隔地の施設に個別のサーバーとネットワークを設置することは、ほぼ必須です。リアルタイム業務を集中化することで生じる遅延を防ぎ、高スループット・広帯域幅のデータパイプラインにかかる費用を回避するためです。
スケールアウトは、ディザスタリカバリと事業継続性をサポートする方法としても好まれています。2台のマシンに同時にトランザクションを書き込めば、一方から他方へのフェイルオーバーを容易に実行できます。さらに、一部のアプリケーションは複数のクラウドやオンプレミスのコンピューターにまたがっており——このようなシナリオでは、複数のコンピューターとプロセッサーにまたがるアプリケーションワークロードを高速化する必要があります。
デメリット
スケールアウトの主なデメリットは、複雑さです。複数のサーバーにまたがる実行ログを分析して問題の場所を特定し、解決しなければならないため、トラブルシューティングが難しくなる場合があります。
所有権も別の懸念事項です。ワークロードが複数のサイトやクラウドに分散されると、説明責任を負う主体が異なる可能性があります。IT部門が一部の技術を管理し、ベンダーが別の技術を管理し、エンドユーザー部門が管理するものもあるかもしれません。複数の関係者が関与すると、性能問題の解決にはより長い時間がかかります。
スケールアウトは、コンピューティングコストとセキュリティリスクも増大させる可能性があります。より多くのコンピューティングリソースと電力が消費され、悪用される可能性のある侵入口も増えるためです。
結論:選択方法
企業によるデータの利用方法は変化しています。膨大な量のデータの収集、保存、処理の需要に対応しようとする企業には、その任務を果たせるハードウェアが必要です。多くの企業が、既存のサーバーをアップグレードするスケールアップか、サーバーを追加して拡張するスケールアウトかを決めることになります。
より多くの処理がエッジ側へ移行し、企業の外部で行われるようになるにつれて、スケールアウトのアプローチが適しています。それでも、エッジで処理するワークロードは増加するため、分散した場所にあるコンピューターのリソースもスケールアップする必要が生じる可能性があります。中央データセンターの処理ニーズも並行して増大する中、多くの企業は、処理とセキュリティのために単一のメインフレームまたはサーバー上に置いておきたいERP(エンタープライズリソースプランニング)システムや大規模データベースを抱えています。
スケールアップとスケールアウトの機能や制約を比較すると、多くの企業は同じ結論に至ります。つまり、両者は相互排他的ではありません。実際、ほとんどの企業は両方のアプローチを採用します。組み合わせて利用することで、将来の成長に向けた選択肢が増え、より優れた拡張経路を確保できるからです。問題はスケールアップかスケールアウトかではなく、将来の成長に向けて組織を最適な状態にするために、両方の拡張手段をどう組み込むかです。
詳しくは企業向けデータストレージの5つのタイプを読み、日々の業務を支えるために必要な情報をすべて保持するという課題に、企業がどう取り組んでいるかをご確認ください。